第六章 潤滑を掘り下げて考察する
 エンジンを組立時、オイルを入れ忘れて回転させれば短時間で焼きつく。だから、エンジンを組み立てる際はエンジンラッパと呼ぶ「油さし」で、少量のオイルを塗布しながら組み立てる。人によってはテフロンペーストや二硫化モリブデンを塗布する。
note:
私はエンジン組立ての際にX1使用を推奨する。X1を塗布した後にドライヤーで熱してX1成分を表面に浸透させて組むと、次回分解した際に全然表面が違う。また分解した部品にX1を塗っておくと、オイルのみを塗っていた部品は錆びるがX1を塗った部品はサビが出てこない例があった。
この塗布したオイル+添加剤は、エンジンを始動しオイルポンプがオイルを吸って、各部に給油を始めるまでの数分間の潤滑を担当することになる。エンジンを始めてOHすると、最初はドキドキしながらセルモーターを回す。最初はなかなか油圧が上昇しないのであせることだろう。エンジンOH時は、@オイルポンプを分解したら必ずポンプの中に沢山オイルを入れて、ポンプ内部のエア抜きをする。AOH後にセルモーターを回す際も、スパークプラグを全数取り外しておき、油圧計の配管はしないでおく。B油圧計取り付け部よりオイルが噴出するまで(受け皿を用意するかウエスなどで周囲に飛散しないように注意する)セルモーターを回す。こうすると短時間でオイルはエンジン各部に潤滑する。これらのノウハウも先輩から教えていただいたり色々な経験を積み重ねてゆく中で自然と身につけたものだ。もっと高度なノウハウもたくさんあるが、高度なノウハウほど文章で伝えることは難しい。
馴らし運転が終了し、各部にオイルが行き渡った状態でドレーンプラグからオイルを全部抜いたとしても、メインギャラリーを含めて各部に給油されたオイルの全てが抜け落ちる訳ではない。オイル総量に関して理解している人が意外と少ないが「本当の意味でのオイル総量とは、エンジン(メカニズム)を組み立てた後で初回に入れることの出来る総量」である。実はオイル交換時にエレメント交換し、全量で4リットル入ったとしても、本当はシリンダーヘッドの凹み、カムシャフト軸受け、メインギャラリー、メタル部分、オイルポンプ内部、この他(オイルクーラーがある場合はオイルクーラーと配管内)などにオイルは残っている。エンジンの種類・粘度・エンジン温度などで左右されるが、この総量は500cc程度になる。添加剤の添加率で「オイル総量の10%」と表記しても、多くの人は「エレメント交換時で4リットルだから10%添加は400ccでOK」と判断してしまう。だがこの500ccを考慮すれば、本当のオイル総量は4.5リットルだから、10%は450ccとなる。
効果が低いとクレームをつけてくる人のほとんどはオイル総量の意味を深く理解していなくて推奨添加率より大幅に低い添加率で使用したケースがほとんどである。間違いなく効果が得られる製品は「効果が低い」と感じたら50ccほど追加投入してあげると見違えるような効果で驚かされたと報告が寄せられる。この例題がヒントになるように急激に効果が高まる添加率が必ず存在する。
コーヒーブレイク:
深夜番組で興味深いCMがある。飛行中のセスナ機からオイルを抜いてしまっても大丈夫・・・という内容なのだが、実際は、特別なことをしなくてもセスナ機はオイルを抜いても飛行できてしまう。その理由は簡単で、滑走⇒V2⇒上昇までの工程はエンジンに多大な負荷が掛かるが、安定飛行になれば、車に例えればアイドリング+α程度の推力で飛行は可能なのである。
ロスアンゼルスで、これから乗り込もうとするセスナ機をレーシングカーを点検する感覚で自然とチェックするのは長年染み付いた職業柄で無意識の内に目で追って各部を点検する。エンジンはスバルの水平対抗。でもボルトやナットは真っ赤に錆びている。主翼を止めているリベットは数本抜け落ちているではないか。「ゲゲッ!」それを見た瞬間に搭乗するのを辞退しようという考えが一瞬脳裏を横切るがそれを押し殺して狭い機内に乗り込む。やがて離陸を始めるがタコメーターにふと目を移すとイエローゾーンは2500rpm、レッドゾーンは3000rpm付近と極端に低い回転数ではないか。故障が許されない飛行機でトラブルの少ない原因が一瞬で解明でき「なん〜だ」と安堵すると共に、それまで私の中で神話化されていた飛行機に対する尊敬するイメージが音を立てて崩れ落ちていった。2300rpmほどで軽々と離陸すると巡航は1200〜1500rpmで充分なのである。着陸はアイドリング状態でボロンボロンと左右に揺れながら降りてゆくのである。飛行機に使用されていると聞いただけで飛行機が解からない(私もセスナ機を体験する前までは凄い信頼性と勝手に思い込んでいた)人は「素晴らしく信頼性が高い」と自分勝手に信じ込んでしまう。実は私も同じように考えていたので飛行機のエンジンは信頼性がずば抜けて高いと信じ込んでいて疑うことはなかった。
セスナ機の巡航は約1500rpm、自動車で高速道路を100km巡航するときは約2000rpm前後、船舶は約4000〜6000rpm巡航、レーシングカーの直線MAX回転数は10000rpmオーバー、F1のMAXは18000rpm、こう比較してゆくと、どのエンジンが一番過酷な条件であるか言うまでもないだろう。参考までにロスアンゼルスに長年住んでいる日本人に話を聞くとセスナ機にエンジントラブルが発生して路上に降りてくる飛行機事故はけっこう起きていると言っていた。
日産大森時代は、マニュアルトランスミッションをOHしてオプションギヤ比を変更したり、デフェアレンシャルを分解してLSDを組み込んだり、ギヤレシオを変更する作業を頻繁に行っていた。これらはいろいろなサーキットを転戦するレーシングカーでは日常茶飯事の作業である。日産大森ファクトリー発足当初、うっかりミッションオイルを入れない状態(組み立て時のオイル塗布のみ)でTSサニーを走らせてしまったことがあった。

富士スピードウェイ左回り:
TSサニーB110:トップを快走するゼッケン84番の鈴木誠一選手。
この頃のレースは名勝負が繰り広げられ見ごたえがあった。

今から考えると貴重な経験をしたのだが、こんな失敗談は決して表に出せないものだ。既に時効であると勝手に判断し、結果を書いてしまうが、MTは富士4.3km(右回り)で、15周目で車が重くなり異臭。その時点でドライバーは「おかしい」と感じてピットインしてきた。一般道路に置き換えるとレーシングカーの4.3km×15周=64.5kmの最低10倍は伸びると予想できるので600km以上は走行可能ではないかと推定される。全く別の時にデフオイルなしで走行してしまった車両を目撃したことがあるが、この時は1周目の1コーナー付近で焼きついてリタイアしてしまっていた。距離にして500〜800メートル。一般道路でも5km持つかどうかであろう。この違いはミッションとデフの構造の違いから出てきた結果であり、オイルが極圧状態でいかに重要な働きをしているかを端的に表している。過酷な条件であるほど、潤滑性能の要求度は高く、故に性能差はミッションよりもデフに大きく表れてくることを示唆している。エンジンはMTとデフの中間くらいの要求度なので、オイルを抜いても巡航を続ければ100〜300km程度は走行できる可能性があると予測される。
手前味噌な話・・・・
私のリリースしたオイル添加剤やデフオイルを始めて使用した古いFR車のユーザーから「デフオイルを交換しただけなのにエンジンが滑らか&元気になってしまった?おかしいな?」という話があった。また他のユーザーからも同じように「デフオイル交換だけなのに、なぜかエンジントルクが大きくなったように感じる」と言われたことがある。
プロペラシャフトから伝達されるエンジンパワーは、デフのリングギヤとピニオンギヤにより、90度の角度変換が行われて両輪のドライブシャフトに伝達される。デフを分解した経験がある人なら話が理解しやすいと思われるが、この90度変換をするためにピニオンギヤはサザエの殻のような螺旋形をしている。リングギヤとの接触は強大な摩擦が発生しているので、この接触摩擦によりエンジン出力が大きく失われている。ここにフリクションロス低減に有効な添加剤を使用すれば、フリクションを大幅に軽減出来た結果でエンジンが見違えるように元気になる。ちなみにFFエンジンの場合は、デフのギヤ構造と異なり伝達方法はミッションギヤに近く、90度の角度変換は行われないので、FR車のデフほどのフリクションロスは発生していない。

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6−1:潤滑とは見えない所で連続して発生する物理的化学作用
 添加剤やオイルが実態とかけ離れて議論されるのは、エンジンにしてもミッションにしてもデフにしても、使用している箇所は全て内部機構であり、直接も目視することが出来ない部分に作用しているからである。余程の研究機関で可動を目視出来るカットモデルでもあれば話は別だが(実際にあるかは不明。)現実には想像するしか術がない。しかし、どんな世界でも長年その道を探求している人は、自然と技術を蓄積してゆく。中華料理の技を見ていると調味料を大きなスプーンで適当にすくって投げ込んでいる。もしハカリで精密に測定すれば、何回やっても同じ量を入れていることだろう。また客の好みに合わせ、微調整していることだってあると思う。これが匠の技であり長年の経験で身についた技術である。素人はあくまで目に見える表面的な部分で判断しがちである。しかしテレビで公開されるのは画面で見えている部分であり、画面で見えてこない部分に長年のノウハウが隠されている。「おいしさの秘密を教えてください」と頼んだら「食べておいしければいいじゃないの」と普通は答えが返ってくると思う。また極意の部分(いわゆる秘伝の部分)は弟子となり長年下働きしたとしても簡単に教えてくれるとは限らない。それをいきなり「教えて下さい」と言うのもある意味失礼な話である。

オイルメーカーとて話は同じであり、色々な試験機を用いて評価試験を積み重ねて製品を開発しているが、これはあくまで机上(試験機)での話である。実際にオイルが使用される環境は試験機のように単純ではなく多岐に亘る。エンジンはオイルポンプでオイルパンのオイルをくみ上げ、複雑なオイル通路を通過して潤滑部分に運ばれる。カムシャフトはシリンダーヘッド上部に取り付けられていて小さな通路からオイルは潤滑を行っている。エンジンの種類によって通路の穴径も異なればオイルパン形状も異なる。またブローバイガスというやっかいな物も潤滑の妨げをするし、最高回転数9000rpmなどの高回転域だって存在する。材質や精度やクリアランスもまちまちであり、オイルの気泡発生率や油温の分布、クランクシャフトを含めた金属の膨張や曲がりや応力や圧力変化など、様々な要因を試験機で再現することなど不可能に近い。従って最後は実車での確認試験を行い、貪欲にDATAを集める訳である。そしてその結果を元に、より良い製品を開発する訳である。そこには経験・試験・DATAの積み重ねが必ず存在し、時には新しい発想や、異なった業種のテクノロジーでさえ存在するだろう。そこには「プロジェクトX」のような勇気や決断でさえ存在するのである。逆に言えば優秀な試験機の結果だけでも優れた製品は生まれるが、それを逸脱するような最高の製品作りは出来ないとも言える。
ちなみに一般的なオイルメーカーの試験方法の例を下記に掲載する。(メーカーによって試験方法は異なる)

A:圧力試験機(油膜保持性能)
試験機により試験方式は異なるが耐荷重、磨耗、磨耗係数を測定。場合により耐荷重と磨耗のみを測定。

A−1:チムケン試験機
回転体を試験片に押し付けて磨耗損傷具合を測定する。私は他でも解説しているように試験方法を改良して試験片に熱伝対を埋め込んで試験片の温度変化を自動測定することにより温度変化(摩擦係数の変化)を自動測定できるように改良した。その試験結果で驚かされた新発見はX1だけは荷重を2倍にすると瞬時に反応して温度上昇が停止しゆるやかになる特殊反応を示すことであった。

A−2:四球試験機・・・名前が示すように複数の鋼球を押し付けて測定する。試験機は更に分かれる。
A−2−1−管田式
A−2−2−JIS式
A−2−3−シェル式
A−3:SAE試験機・・・二つの回転体で測定する。
A−4:アルメン試験機・・・中央の回転体を両側から湾曲した形状の物で押し付けて測定する。 
A−5:ファレックス試験機・・・中央の回転体を両側からV形形状の物で押し付けて測定する。

B:粘度測定テスト
オイル劣化具合を見るために100℃と40℃の動粘度を測定する。細いガラス管の中にテスト用オイルを入れて、これを100℃になるまで加熱し、一定の量のオイルがどのくらいの時間を要して流れ落ちたかということから粘度を測定する。

C:酸化安定度テスト
オイルを高温(165.5℃)に保ち、触媒として銅と鉄を挿入。96時間の長時間に渡って攪拌を続けてオイルと空気とを強制的に混合して酸化を促進させ粘度や劣化具合を分析テストする。

D:パーネルコーキングテスト
オイルが高温に晒される部分の炭化スラッジ発生をこのテストによって確認する。アルミ板を高温(280〜320℃)に熱しておき、このアルミ板に15秒間オイルを飛散させて45秒間停止。このサイクルを長時間(試験目的により時間を変えて)長期間に渡って行う。当然ながら低温時よりは高温時に変化が現れる。実車でもエンジンOHを行った際に目にすることが多いのがピストントップリング付近とピストン側面(ピストンピン周辺)に付着したスラッジ。

E:中和価テスト
新品オイルにはブローバイガスを中和する目的でアルカリ成分が添加されているのでオイルが劣化するとアルカリ成分が減少することになる。従ってオイル劣化具合を知るためには、どれだけアルカリ成分が減少したかをアルカリ成分を添加する量によって知ることが出来る。

F:ホットチューブテスト
高温耐熱性及び洗浄性を確認するためのテスト法。ガラス管の中に1Hに0,3ccという極少量のオイルを空気圧で押し上げる。これを300℃という高温で時間を掛けて(1Hに10cm)流すことによりガラス管内部に付着するスラッジ量をテストする。当然ながら性能の悪いオイル(清浄分散作用の低い)はスラッジ付着量は多くなる。

J:フレックステスト
動弁系(カムシャフト対ロッカーアーム)に対するオイル潤滑性能を測定するテスト法でアメリカのフレックス社が考案したことから、この名前で呼ばれる。実際のエンジンの動弁系部品に掛かる圧力(20〜40kg/mu)の3〜4倍(90kg/mu)でテストして磨耗損傷具合を見る。

H:ベンチテスト
オイル性能の確認のために実際のエンジンを台上で長時間にわたり運転して各種DATAを測定し確認する。規定の時間をテストした後で、オイル劣化具合を再び測定し評価する。

これらの試験法はほんの一部であるが、最終的に使用されるのは実車でありベンチテストとは大きく異なってくる。つまり、頻繁にストップ&ゴーが繰り返される。ベンチテストは一定の回転数での燃料消費率や馬力&トルクを測定することに向いている。また水温や油温は大きなタンクで(余裕がある)自動的に温度管理できるので、実車の決められた冷却容量とは異なってくる。また、レース車両で要求される性能と一般市街地で要求される性能は大きく異なってくる。一番大きな違いはレースは短時間で評価できるのに比べ、一般車は長期間のオイルライフサイクルを見ていかなくてはいけない。それも他の項目で解説しているように千差万別なので正当な評価はとても難しい。

大企業には全てが存在し、中小企業には存在しないものが沢山ある。ゆえに、中小企業に製品開発など出来ないと思っている方も多いだろう。だが製品開発に必要な重要要素の中には、KKD(勘・経験・度胸)だって必要なことを忘れてはならない。前出の通り、私は小さな町工場から大手自動車メーカーまで幅広い職歴があるが、それぞれを分担して研究開発・実験を行う部分においては大企業には目を見張る部分がたくさん見受けられる。またコストマネージメントも徹底しており、無理・無駄・ムラといったものが発生しない環境作りは流石と思わせてくれる。だが、そこまで徹底した管理は職人ではなく作業工の受け持ちであり匠の技のコツや勘などアナログ的な部分はできるだけ排除したい。だから勘や経験はすべてDATAとして形を変える。だが全てが変換出来るかといえばそれはNOである。また経営者独断での度胸も発揮されることはない。私が30数年前に3バルブ、可変作動角カムシャフト、可変バルブタイミングの構想を抱いていても、どうすることも出来なかったのが現実である。これがもし小さな工場であれば、社長が決断した瞬間から新製品の開発のスタートが始まる。また、製品用途に関しても、客先ニーズが多くなければ開発出来ない大手に対し、「優秀なものなのだから、完成してからニーズなんて考えればよい」という性能優先思考で製品の開発が可能なのである。

オイルとまるで違った業界ではあるが、判りやすく比較する意味で、料理店にすり替えて話をしてみたい。例えて言うなら、高級割烹料理店とファミリーレストラン。比較にならないことは誰の目にも明らかであり、互いにモチベーションは違う。だがどちらも同じ空腹を満たす料理店には変わりない。割烹料理店は素材にこだわり、コストよりクォリティーを最優先で考える。それは価格ではなく、味にウェイトを置いた顧客のニーズに合わせてである。だがそれだけに顧客を選び、その店の味を知っているのはごく限られた人だけである。逆にファミリーレストランは、コスト優先によるセントラルキッチン方式がゆえに、鮮度や味には限界がある。だが全国どこでも同じ味というのが売りであり、チェーン・ブランドとして安心感がある。ゆえに多くの人が味を知っている。
ここで互いにやってはいけないこと・・・・それは高級割烹料理店でコスト優先の料理を出してしまったり、ファミリーレストランで、客単価が1万円を超えるような価格になってしまったら、それはどちらも顧客からの信頼を疑われる。だから高級割烹料理店はたとえ無駄と言われようとも、妥協やコスト優先を絶対にやってはいけないし、ファミリーレストランは、5000円以下の客単価でも、十分に(それらの)顧客層の腹が膨れる料理を提供しなければならない。
どちらの店を選ぶかは、顧客次第である。大きい小さいがクォリティに比例しない好例である。
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6−2:広告や宣伝やイメージ図は事実を表していない

もし、オイルや添加剤を販売しようとしたら、その宣伝や広告は、タイヤ&ホイールなどと異なり、詳細な作用を説明しないと購入してくれない。消費者が求めるものは「A:性能 B:作用 C:結果」の具体的な解説であり、それが購入動機となる。それらの広告での具体的記載例は要約すると下記の通りである。
A:性能 馬力&トルクの上昇率を記載。 「何馬力アップ」「トルク何%向上」「燃費何%アップ」など
B:作用 模式図を用いて作用を説明。 「摩擦面のザラザラが・・・」「潤滑性能が格段にアップ」など
C:結果 第三者の使用を例に挙げる。 「○○で使用」「○○が正式採用」「○○でなくてはならない」など
だが、これらの宣伝・販売方法には、首を傾げたくなるようなおかしな点が多々存在する。

●「何馬力アップ」
最高発生馬力はそのエンジンの最高回転数から約300〜500rpm下がった回転数で発生する。ところが一般道路ではアイドリングから最高回転数の3分の1ほどの範囲(650〜3000rpm)までが主に使用されている。もちろん最高馬力は低いより高いほうが性能が良いのは明白であるが、それより「何秒で最高回転数に到達するか」の方がユーザーが実際に効果として体感出来るものなのである。レースと異なり、一般道では「赤信号で停止、青信号で発進」を繰り返す。アクセルを踏んだ瞬間の反応(ピックアップ)、加速の早さ(レスポンス)、回転の伸び(トルクとフリクションの少なさ)の方がドライバーにとって五感に感じるものであり、広告にある「何馬力アップ」を体感しようと思っても、なかなか味わえる場面は訪れない。また最高回転数での数馬力向上を肌で感じ取ること自体が無理だろう。それより、前記した項目に対して効果的な製品の方が、滑らかで軽やかな走行感覚となって伝わってくる。

●「性能向上を謳う各種実演販売」
大きなマイナスドライバーの先端に、水飴のような粘度指数向上剤を一滴塗りつけ「親指と人差し指でつかんで見てください」と差し出す。誰もがつかもうとして力を入れても、滑ってしまいつかむ事が出来ず、ドライバーは落下してしまう。すると「うわー!凄い!」と感激の声をあげることとなる。このテストでの大きな間違い(トリック)は、オイルが常温(気温に準じたその時の温度)であるので本来の高温状態での潤滑など何も表していないことが欠落している。オイルの常温状態はエンジン始動直後の僅かな数分間であり、すぐさま摩擦熱や燃焼温度の影響で上昇してしまうということを考察しなければいけない。摩擦部分の表面温度はフリクション発生(摩擦熱)により短時間で急激な温度上昇に至っている。この摩擦熱を冷却する役目を担っているのがオイルだから、レースや坂道のように過酷な条件で、いかに摩擦部分を保護する働きをするかはたとえ模式図や模型を使用したとしても、表現しきれるものではない。実験と実際との落差もここに隠されていて、エンジンを長時間最高回転数付近で連続走行を続けると、オイル中の気泡含有率が次第に上昇する。この気泡含有率がある一定率を越えると(約15〜20%)現在主流となっているオイルタペット(ラッシュアジャスターとか、ハイドロリックアジャスター、HLAと呼ぶ)が正常に作動しなくなり(バルブ誤作動)バルブとピストンが干渉し、エンジン破損に至る。そこでWRCクラスの車両になると破損防止目的でシム式(更にアウターシム式とインナーシム式がある)に改造するがシム式のメリットは重いHLAの軽量化が同時に図れてしまうという利点も生まれてくる。横道にそれたが、要は店頭での実演販売、模型、模式図では本当の性能は伝えきれないということである。またそれが真実か?否か?ですら、判らないのである。だから全てが無意味かと問われればそうではなく一般の人に解りやすく作用を説明する際に解り易い模式図を用いて説明することは避けて通れないアプローチと言える。

●「○○で使用」
まず、○○という名称自体が存在しているかが問題である。国内ならまだ確認のしようがあるが、話が海外になればその存在を確認するのも大変である。次に本当に使用しているか?というのにも疑問が残る。特に軍需産業などの場合、その真偽を確かめたくて問い合わせを行ったとしても、回答は返って来ないだろう。もし使用していたとしても、それが継続的使用なのか?一度のスポット使用なのかすら判らない。原材料の不透明さ、配合率の真偽はメーカーを信じるしか方法はない。だが、ハッキリとした効果がある製品なら疑う余地もなくもっと早く問題が浮き彫りになったのでは?と私は思っている。

オイルのいろいろな作用のうち潤滑という仕事をしているのは、接触しているA面とB面の間での境界面だけ(数ミクロン単位)であり、残りのオイルは循環しながら冷却したり洗浄したり防錆したりしている。このA面とB面の潤滑を境界潤滑と呼び、ベースオイルのみでは保護しきれない。そこで摩擦調整剤(フリクション・モデファイヤー:略してFM剤)が内部添加剤として添加される。だがらベースオイルが良いオイルほど添加剤は少ないというのは変な表現である。確かに大昔の技術によって作られたベースオイルに、ただ固体潤滑剤を入れただけの単純な製品なら当てはまらなくもないが、何十年前の話を持ち出して、現代の製品に当てはめて論じても的を得ていない。
ひとつの成分で複数の働きをする添加成分は沢山見受けられる。例えば硫化テルパンという名前の添加剤成分。この添加剤の目的は酸化防止と腐食防止の二つの働きを助けることである。また非常にポピュラーなものだと、アルコールが挙げられる。(但し添加率は0.1〜1.0%と微量)油性剤、防錆剤、消泡剤の三つの作用を高めることが出来る。これらの複合作用をもつ成分を含め、最低でも5〜10種類の成分を配合し、外部添加剤としてオイルに添加した際、内部添加剤の添加率が低減しないように配慮して調合される。従って(製品によって大きな差があるが)外部添加剤を添加したら元々のバランスを崩してしまうとか、ひとつだけ性能を向上させても意味がないという話は検討違いな話となる。以前、どこかの国のジャーナリストが書いた添加剤に関する記事が一時話題になったことがある。詳しくは記憶していないが「ホットケーキを作ろうとして卵を入れたとき、たくさん卵を入れてもバランスを崩してしまうだけで添加する意味がない」おおよそこんなたとえ話で添加剤を評していた。普通の人には一見して解りやすいようでデマと同じように広まった。果たして真相はどうなのだろうか?懸命な読者は理解が深まってきたと思われるが、この説明は大きな間違いを犯している。
A:卵の中に卵を入れるという同じ成分としてとらえているが添加剤成分は同じ目的で使用される成分でも種類は豊富であり同一で論じられない。当然、価格と性能はピンキリで性能差も大きな格差がある。
善意的にとらえれば、安いオイルはベースオイルも当然安価な粗悪品が使用されている。後からどんなに高性能な添加剤を添加してもベースのオイルライフが短いので、あまり延長できず、結果的に高い添加剤になってしまう。このことを勘違いして読者に伝えようとしたのかもしれない。また、どんな複合製品であっても、最大量として20%を超えて添加するような使い方をすれば、ベース(オイル)の割合が低くなり過ぎて、多量に添加した意味合いが少なくなってしまう。砂糖を水に溶かしても、ある一定以上は溶けなくなるのと似ているので過剰な添加は慎まなくてはならない。
B:一つの成分が一つの役割だけをするのではなく、複数の役割をする成分もたくさんある。確かに一つだけの成分であれば問題に思えるが、0W−20などの柔粘度オイルが引き起こすメカニカルノイズを軽減させようと粘度増強剤を添加することは、対ノイズ低減には効果的と言える。だが純正オイル(0W−20)はバランスが取れていると錯覚している場合、そのバランスを崩す行為ととらえてしまうであろう。確かに性能が低い製品であれば期待した効果は得られないまま添加剤不要論に発展しても不思議ではない。
C:昔は基油の中に一つの成分(例えばPTEF)を入れた物が多く販売されていたが、今は複数の成分による複合タイプでトータルパフォーマンスを向上させるように高価格帯添加剤は進化してきている。金属表面を改質するタイプの場合、摩擦に反応する成分だからエンジンを始動して走行しないと金属表面に作用しない。これは即効で結果が出るマジックなど(種と仕掛けがある)や即効性だけの成分と異なり走行距離が増すほど効果が発揮されるので長期間に渡って高い性能を傍受できることになる。
D:百聞は一見にしかず。使ってみれば判るのだが・・・・但し、安かろう悪かろうというコンセプトの製品をいくら使っても理解は進まない。この手の安価な製品を沢山試して「やっぱり添加剤は効かない」と言ったところで最高性能を含めた全体像の話とかけ離れた話をしていることに本人は気がついていない。安物買いの銭失いなだけである。だが添加剤を否定する人々の多くはこの例に当てはまるか、その話を聞いて自分の体験と同じだったので間違いないと信じ込んでしまった人である。
その他の誤った認識の例
添加剤で高回転が綺麗に回るのはオイル粘度が柔らかくなるからである。
それなら同様に添加剤ではなくとも、柔らかい粘度のオイルを使用すれば結果は同じであると勘違している。レスポンスがアップするのは、摩擦低減や燃焼改善による波及効果でトルクアップなどが改善されたためである。また高回転が軽やかに回ったりするのもフリクションロスを大幅に低減できた結果で軽やかに回るのである。他にも摩擦熱発生が抑制され、油温が低下する。この場合、実質粘度は下がるどころか反対に上がったことと同じになるので、油圧はむしろ向上&安定する。
もちろん粘度が柔らかければ抵抗は減少するので通常はレスポンスがアップする。しかし、高回転を長時間使い続ければ当然ながら激しく走ることになるので、柔らかいオイルであれば油膜を突き破って接触は増大しフリクションは増大しシリンダーが傷ついたり磨耗したりして軽やかに回らなくなってきてしまう。オイルは柔らかければ良いというのは、スプリントレースのような短時間で勝負する場合のみ有効なことで、長時間レースでは耐久性に影響が出てしまう。また粘度の低い添加剤を50%も添加すれば確かに粘度は低下するが、通常の推奨添加率は10%前後なので粘度は然程変わらない。オイル銘柄によっては固い粘度と柔らかい粘度のオイルを混ぜて希望する粘度を作り出す製品もあるが、添加剤の5%〜10%とは比べ物にならない粘度変化となる。
クロスハッチが無くなると焼きついてしまうから、鏡面化される添加剤は使用しない方が良い
ピストンリングを潤滑させるために必要なクロスハッチが無くなり、鏡面化されるのは研磨剤で削りとられたためで、クリアランスが広まってしまうとか、鏡面化によりオイルが保持できないから焼き付きの原因になるというのも誤った認識と言える。昔の潤滑理論をそのまま現代に持ち込んで吹聴しているに過ぎない。
私のリリースしているX1もこの部類の添加剤に入るので、例として解説すると、X1は一種の圧延作用を行う。通常は接触するとお互いが傷つき、切粉が発生したりする。表面に吸着した成分が作用して滑らせることにより、ハンマーで叩かれたのと似たような力が表面に加わり、圧延(引き伸ばされる)されるため、切粉発生は大幅に減少する。この時にオイルの中に数ミクロンの切粉が混在していても、金属表面に箔押しのように一緒に同化させてしまう。この作用が繰り返し行われることにより、金属表面の損傷や磨耗は軽減できるので、長期間使用するほど金属表面が光り輝いてくる。
光り輝くことは高度な潤滑が行われ傷つかないで守られていることの何よりの証であり、むしろ好調子が長期間維持できている(調子は10万km過ぎても向上してゆく)結果が全てを実証している。従来の常識を打破する製品にしばしば見受けられる現象と言える。

次に添加剤の基礎知識を少しだけ紹介する。
添加剤は大きく下記の二つに分類できる。
A:摩擦調整剤
B:油性向上剤

更に分類を細分化すると
A:摩擦調整剤は
A−1:固体潤滑剤
    ●二硫化モリブデン(MoS2)
    ●PTFE(テフロン)正式名「ポリ・テトラ・フルオロ・エチレン」
    ●セラミック
    ●ボロン・ナイトライド
    ●人工ダイヤ
※無機化合物と総称する
A−2:極圧添加剤
    ●硫黄化合物
    ●リン酸化合物
    ●塩素化合物
    ●有機モリブデン
    ●有機チタン
※有機化合物と総称する

B:油性向上剤は
B−1:粘度指数向上剤
    ●オレフインコポリマー
    ●ポリメタクリレート
    ●その他
B−2:潤滑補助剤
    ●オオバオイル
    ●エステル
    ●ジェステル
    ●オレフィン
    ●スクワレン(鮫油)
    ●ラノリン(羊油)

これらは基本中の基本の部分であるが、すでに多岐に亘っている。昔はベースオイルの中に、A−1:固体潤滑剤を1種類のみ添加している単純な物が多かった。(現在でもまだこの形態で販売されているものもあるらしい)またはB−1:粘度指数向上剤(水飴のような粘度の高い物)100%の製品が販売されていた。だが現在販売されている(効果のある)製品は、このような単純なものではなく、成分の種類においても、各々の特性にしても格段に優れている。また塩素系添加剤はコストパフォーマンスが高いので、機械加工の切削油のなかの添加剤として盛んに使用されてきたが、近年の環境問題に配慮した場合、燃焼によりダイオキシンが発生するため、各種の対策が取られている。
A:塩素系添加剤の含有率を少なくする。
B:塩素系添加剤の代変え品を使用する。
C:塩素系でもダイオキシンを発生しないように改良する。

よって塩素系といっても、一昔前のものとは別物であり、もはや名称だけのものとなりつつある。安全面・環境面での配慮がなされ、長期腐食するなどといったことは、ユーザーとは無縁な事となっているのである。
AとBとCの添加剤を混合使用すると、同じ金属表面に対し3つの違う成分が作用することになる。実際は余程相性が悪くない限り、混合によって短期間に焼きついたり、弊害が発生する確率は限りなく低いのだが、各社共に「混合して使用しないで下さい」という公式見解であろう。その理由は
A:実験により全てが確認されていない。
B:従って結果を100%予測できない。
C:自社製品の性能が高いと判断しているので混ぜる必要性がない。
D:万が一の故障の際に、故障原因として他社との因果関係は断ち切りたい。
などの理由が考えられる。あくまで自己責任であるが、廃車直前の車に試してみるのもおもしろいかもしれない。
予測:特別な場合以外は悪くなるケースは考えにくい。ただし余計な出費がかさむ割に効果は比例して期待できないため私は推奨しない。実力のある高性能製品であれば1種類で使用したほうが確かな結果が得られ易い。

エンジンオイルに最初から添加されている内部添加剤には、厳しい規制が実施されている。特定化学物質として少しでも有害性が認められた場合、規制に該当し使用できなくなってしまう。高度な話はつまらない話になるので興味の無い人はパスして構わない。

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部改正案(2,4,6-トリーtert-プチルフェノール及びN-モノ(又はジ)メチルフェニルーNーモノ(又はジ)メチルフェエルバラファニレンジアミンを第一種特定化学物質として指定すること等)」の概要
1:第一種特定化学物質の推定
 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号)」(以下「化審法」という。)第2条に定める第一種特定化学物質として、間法施行令第1条に次の2物質を追加指定する。
2,4,6-トリーtert-プチルフェノール(TTBP)
N-モノ(又はジ)メチルフェニルーNーモノ(又はジ)メチルフェエルバラファニレンジアミン(PDA-Z2)
(N,N’-ジトリルーp ーフェニレジンアミン(PDA-T2)、NートリルーN’ーキシリルーp-フェニレンジアミン
(PDA-TX)又はN,N’-ジキシリル-p-フェニレンジアミン(PDA.X2)
(第一種特定化学物質に該当するものと判定された根拠)
(1) 以下の理由から、2,4,6-トリーtert-プチルフェノール(以下「TTBP」という。)は、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、生体の体内に蓄積されやすいものであり、また、継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるため。
@ 微生物等による化学物質の分解度試験において、酸素消費量(BOD)により測定した分解度が0%、直接法(HPLC分析)により測定した分解度が5%であるとの結果から、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであると判断された。(詳細は別紙=割愛)
A 魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験において、コイを用いた試験により測定した濃縮倍率が最大23,200倍であるとの結果から、生体の体内に蓄積されやすいものであると判断された。
(詳細は別紙=割愛)
B 動物試験(ラットを用いた2年間経口投与毒性試験において、肝臓の肝細胞肥大や空胞化ならびに巣状壊死がみられること、また、NOEL(最大無作用量)は飼料中濃度で30ppm未満(注)と判断されたこと等から、継続的に摂取される場合
には、人の健康を損なうおそれがあると判断された。
(注)動物当たりの投与量としては約1,5mg/kg/day未満程度

(2) 以下の理由から、N-モノ(又はジ)メチルフェニルーNーモノ(又はジ)メチルフェエルバラファニレンジアミン(以下「PDA-Z2」という。)は、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、生体の体内に蓄積されやすいものであり、また、継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるため。
@ 微生物等による化学物質の分解度試験において、酸素消費量(BOD)により測定した分解度が0%、直接法(GC−MS法)により測定した分解度が4%であるとの結果から、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであると判断された。(詳細は別紙=割愛)
A 魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験において、コイを用いた試験により測定した濃縮倍率が最大15,200倍であるとの結果から、生体の体内に蓄積されやすいものであると判断された。
(詳細は別紙=割愛)
B ア)動物試験(ラットを用いた2年間経口投与毒性試験において、肝臓、腎臓や副腎の相対重量の増加、摂取量の減少、貧血症等の影響があること、NOEL(最大無作用量は)は飼料中濃度で40ppm(注)と報告されたこと、
(注)動物当たりの投与量としては約1,1mg/kg/day程度
 イ)さらに同試験の飼料中濃度1000ppmにおいて、卵巣への発がん性が懸念 される所見がみられていること、
(3) ウ)催奇形性の動物試験において、胎児への胚致死作用等の影響があること、NOEL(最大無作用量は)は飼料中濃度で4mg/kg/day(注)と報告されたこと等の結果から継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあると判断された。

第一種特定化学物質の推定に伴う規制
(1) 当該化学物質の製造、輸入の規制について
当該2物質の製造の事業を営もうとする者は、化審法第6条に基づき事業所ごとに通産産業大臣の許可を受けなければならないほか、これらを輸入しようとする者についても化審法第11条に基づき通商産業大臣の許可を受けなければならない。
(2) 当該化学物質が使用されている製品の輸入規制について         
TTBPが使用されている製品のうち、酸化防止剤(潤滑作用、燃料油用)及び潤滑油について、化審法第13条に基づく第一種特定化学物質が使用されているものを輸入してはならない製品(以下、「輸入規制品」という。)として指定する。また、同規定に基づき、PDA-Z2が使用されている製品のうち、老化防止剤及びスチレンーブタジエンゴムについて輸入規制製品として指定する。
それぞれの化学物質を用いた製品の概要ならびに化審法第13条の規定に基づく輸入規制製品としての指定の理由等については以下に示すとおりである。

エンジンオイルに添加される内部添加剤は、この法令で解かるように厳しい規制が施行されている。古い規制の一部を抜粋したものであるが、一般の人にとったら始めて目にする名前や試験法・専門用語がぎっしりと並んでいる。規制以外にも研究開発でのクリアすべき課題は多岐に亘るが、難解な話なので詳細はあえて語ることもなかろう。
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6−3:雑誌テストで見えてこない真実について考察する
 ここで雑誌テストの全般を否定するつもりはない。しかしながら雑誌という性格上、どうしても見えてこない部分が存在する。それはテストが短期間であるがゆえに発生する、テストレポートの不十分さに起因している。だが実際にユーザーは長期間にわたり一台の愛車に使用する訳だから、そこにユーザー車両での最終結果とは大きな隔たりが出てしまうことは否めない。

テストレポートが不十分である原因
A:発売日の締め切りに間に合わせることが優先
短期間ゆえに初期性能のみをテストしている。持続性を含めた全体像には程遠く、結果として即効性さえ優れていれば「良い製品」と判定され紹介される。

B:同じテスト車両が次々と違う製品をテストする(残留成分の影響がある)
金属表面を改質する製品Aのテスト後に、改質効果がない普通のオイルB(但し新油)を入れた場合、改質効果が有効な間は、Bの新油効果と相まって良い結果が出てしまう。実際には、Aの改質効果がなくなった時点で急激な性能低下が起きる。つまり、これではAの新油との比較ではなく、Aの古い油 vs Bの新油+Aの改質効果 ということになるが記事で語られることはない。

C:長期間の継続テストではなく、短期間なテスト結果で評価される
Aと同じ理由、また、紙面で「今後も継続するかテストを続けて結果を発表したい」と書かれていても実際にはライターが変わってしまったり、次の製品のテストをする関係で難しく実際に掲載されるケースは限りなく低い。

D:テスト車=ライターの自家用であるケースが多く、排気量、走行方法などが千差万別
テスト車が自家用車であるがゆえに、各ライター間での差は未知数。同じ人間でも違う車でテストすれば公平な評価が出来ないのに、各々が違う車で評価すれば、その結果が公平であることに勤めても、実際は大きくかけ離れた実験結果となる。読者側もそこまで気がつかないので数値など結果だけで判断することになる。

E:ライターにより技術把握レベル・性能評価レベルに大きな差がある
ライターは書き手のプロであって、評価のプロ・自動車についてのプロではないということ。いい風に捉えればよりユーザーライクなのかも知れないが、それは感覚的なものであり、評価基準さえ知らなくとも記事を書いてしまう例もあるので、注意が必要である。もちろん、メーカーサイドの説明をしっかりと聞いた上で、その通りにテストするのが正しいのだが、「1000kmから(徐々に)効果を発揮しだします」という解釈を1000km走行すれば(完全な)効果を発揮すると勘違いしたり、説明書もロクに見ないで規定量を数十倍超えるような方法でテストしたりとハチャメチャなケースも割と多いのが事実である。こだわった車好きの一般アマチュアの方で高度な評価試験ができる方をたくさん見受ける。苦労して自分で稼いだお金を投資して愛車をいたわる人の中には下手なレポーター以上の人も存在する。

活字(雑誌、新聞、単行本)放送(ラジオ)、映像(テレビ)から得た情報は100%正しい受け取られがちである。それが正しい情報か?間違っている情報か?は実際に使ったことのある製品評価を敢えて読んでみたり、他のソースでの評価を参考にしたりして、総合的に判断することも必要である。「8割予測して、2割検証する」という感じでも十分読み取り能力は高くなり、個人としてのスキルも高まる筈である。
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第七章 性能は液体の能力で大きく左右されている