第十二章  燃費に関する複雑な要因を掘り下げて考察する
 燃費は走行後確実に判る(計算できる)唯一の数値なので、信頼に値すると誰しもが考えると思う。だが実際には、いろいろな外的要因により誤差が生じる。ここでは燃費を左右する要因を深く掘り下げて考えてみることにしよう。

燃費の計測法
A:満タン計測法
 ガソリンスタンドで給油した際、トリップメーターをゼロにリセットしておき、次の満タン給油の際に走行距離(km)を給油量(リッター)で割れば燃費1(km/L)が算出できる。計測器を用いないもっともポピュラーな方式である。
満タン計測における誤差の発生要因
1:ガソリンスタンドは平坦ではなく路面が傾いている給油所もあるので、必ずしも一定量が給油されるわけではない。
2:自動給油ストッパーが作動して一旦給油がストップした後、係員によってどこまで入れるかは異なってくる。外車の取説などには「給油口一杯までの給油はトラブルの原因となるのでしないで下さい」と指示されている場合もある。
3:満タンでの給油量のばらつきがあるので、少ない給油量の時に大きな誤差が発生する。
4:トリップメーターにも誤差がある。
車検の際にスピードメーターの誤差測定も項目に入っているが、許可範囲はプラス15%マイナス10%が許されている。またインチアップ等により、タイヤサイズを変更するとスピードメーター誤差が増大することもある。また、タイヤの空気圧が違っても厳密にはトリップメーターに影響を与える。

B:純正の燃費計
 車種によっては標準で燃費計が装着されていて燃費計測ができる。この場合は電子制御燃料噴射の車で、インジェクター開弁時間により算出されて表示される構造が多い。実際の噴射量は電磁ポンプの能力で燃料圧力が微妙に変わる。つまりバッテリーが弱っていたり、走行距離が増大してポンプの回転体が磨耗したりすると燃料圧力は少し変化する。また燃料の温度変化によっても、実際の噴射量は微妙に変化するので100%と精密とは言えない。問題は何%ほどの狂いが発生しているかとなる。

C:燃料流量計を用いて正確な燃料消費量を測定。
この場合、シャーシダイナモ等に載せ、試験として行うもので一般的ではない。実際の走行では路面抵抗は刻々と変わり、風向きや風速も刻々と変わるなど各種諸条件が変化するのに比べると、比較試験はいかに一定条件を持続させるかに(一定速度燃費測定法)努力が払われる。特に大型トラックなどになると、走行形態や積載条件が多岐に渡る上に、その燃費を車両ベースで評価するには大型のシャシダイナモを必要とするなど、多くの技術的課題があるため、燃費の評価方法が存在しない。また、気体燃料を使う天然ガス車、LPG車やメタノール車など新燃料車(燃料電池車)の燃料消費率の測定法も確立されていないのである。

 また燃費に関する話題で誰しも一度は疑問に感じるのが「カタログ表示値と実際の燃費が大きく異なる」という点で、燃費測定法の難しさの一端を表している。これは、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」等で、自動車の燃費の表示については、運輸省審査値である「10・15モード」という、定められた試験条件のもとで測定した値とする旨が規定されているためである。実際の走行時には、運転方法、気象(風速・風向き他)、道路等の条件が異なり、燃料消費率も異なってくるため、カタログに記載されている燃費とは異なってくる。しかし、この「10・15モード燃費」は実際の燃費と比較するものではなく、他の車種と比較する際に、「全く同じ一定条件のもとで測定された値」として有効な数値である。
燃料電池の燃費測定法
燃料電池の燃費測定法は現在(2005.09現在)まだ国際標準が確立されていないので、日本自動車研究所(JARI)が、燃料電池車の燃費測定法として「圧力法」を確立した。この方法は、現在最も信頼性が高いと考えられ、11月にアメリカで開催される国際標準化機構・技術委員会(ISO・TC)で提案され、JARIの提案が国際標準として認定される可能性が高いと言っている。圧力法は、気体の性質を利用して、水素タンク内の水素消費量を計算する方法。燃料電池に水素タンクをつなげ、10・15モード走行の前後で圧力、容積、温度を計測する。水素ガスの消費量は圧力と容積に比例し、温度に反比例することから、計算で求めることができる。この方法による測定精度はプラスマイナス0.8%。圧力法のほかにも水素消費(流量)法、電流法、重量法という手法で測定実験を繰り返したが、圧力法以外の方法では、装置が高額で技術的に困難だったり、測定誤差が大きかったりといった問題があることが分かった。これから主流となるであろうハイブリッド車の実際燃費に関しても難しさがつきまとう。
このように燃費の正確さを追求すると、非常に難しく費用も設備も半端ではないことが分かってくる。だからこそ多少は誤差が出てきても手軽に測定できる満タン法をないがしろにしてはいけない。
1.1回の給油でのDATAでなく、最低でも3〜5回給油した際の平均燃費とし平均化する。回数が多ければ多いほど誤   差は平均化され精度は高まってゆく。
2.給油所での給油の際に、自動給油ストッパーが作動した状態からは入れないようにお願いする。
3.空気圧をまめに測定し、適宜調整する。
4.年間を通して測定し、気温の変化(空気密度の変化)や、それに伴うエアコン等の負荷を考慮する。
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12−1:運転方法の違いによる燃費の変化

A:暖気運転、空吹かし
B:渋滞(休日使用、大都市内と周辺、通勤通学)
C:山坂(登坂や曲がりくねった道が多い)
D:急加速、高回転多用
E:極端に気温が高い場合
 一般的に市街地の燃費は悪いと言う場合がほとんどである。まず、AとB項目は車両が停止してエンジンはアイドリング状態であるから、トリップメーターは動いていないのに、どんどん燃料を消費している状態。A&B時間が長くなるほど燃費(km/l)は低下してしまう。更に渋滞や市内の信号が多い道では短時間でストップ&ゴーの繰り返しが行われるため、赤信号から青信号に変わった途端に急発進、急加速を余儀なくされる。また、通勤通学の場合は距離が問題となってくる。短距離通勤などの場合、暖気運転を長く取れば燃費低下に大きく反映されてしまう。このように市街地では上記ABCD条件に当てはまることは頻繁で、燃費に対して不利な条件が次々と襲い掛かる。ゆえにカタログ燃費モードより大幅に低下してしまうことは当然の結果である。
 反対に、夜間の高速道路やバイパス道路、エリア別なら北海道道央〜道東などといった、極端に空いていて止まったりする要素がない平坦路において、驚くほどの高燃費をマークするのも当然である。ある意味、混雑条件が著しく変化する市街地より、高速道路の燃費のほうが、各々の車を比較する場合に向いているだろう。
また、一般的に認知度が低い要因として気温がある。夏になればエアコンを多用するから・・・と思う人がほとんどである。確かにエアコン多用による燃費低下は大きい。(≒80%) またそれとは別に、気温が高くなれば空気密度が低くなり、酸素量が減少。燃料噴射量も調節され(減少)出力は低減する。この2つの相乗要因の結果、同じ巡航を行うにしても、少し多めにアクセルを踏むことになり燃費は悪化する。
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12−2:排気量と重量のバランスで変わる

 基本的には排気量が大きくなるほど要求燃料は増大する。結果として沢山の燃料を消費することになる。だが、実際の燃費を調べてみると、同一区間の同一速度での巡航でもこの公式は一概に当てはまらない。
A:軽四輪は排気量が小さい分、出力も低く、「ベタ踏み」が多いので意外と燃費が悪い。
B:1000〜1600ccのNAは素晴らしい燃費をマークする。(営業車向けに好んで採用される理由でもある)
C:昔のセドリッククラスは2000ccよりも2400〜2800ccの大排気量車のほうが良い燃費をマークした。
D:同じ排気量、同等な車両重量でもメーカー・エンジン形式により大きな開きがある。
E:当然、全ての場合においてターボは燃費が悪くなる。(実質的に排気量アップと同じ理屈)
上記の例が示すように、最終燃費は排気量(エンジン出力特性も影響する)と車両総重量がベストマッチングすると好燃費車となる。また同じメーカーでもエンジン形式によって、素晴らしい燃焼をする傑作エンジンが生まれるときがある。試しに近所の駐車場に停車中の全ての車のマフラーを観察してみて欲しい。注:不審人物と怪しまれないように!(笑)
マフラー内が綺麗で黒いススが何も付着していない車と、ディーゼル車?と思うほど真っ黒なマフラーのガソリン車など、大きな格差を目の当たりに出来ると思う。また、E:の項目にあるターボの場合、圧縮して空気と燃料を燃焼室へ送り込み、結果として排気量を大きくしたのと同じ働きをする構造なので、燃料も比例して増えるため  排気量×(1.4)=NA排気量と換算できるでしょう。(カッコ内は平均値。タービンの大きさで変化する。日産のリニアチャージコンセプトは(1.3以下)
また、軽自動車に代表されるように、エンジン出力に対し車体が重いと常にアクセルべた踏み状態となり燃費は悪化する。逆に排気量が大きく重量が重くてもエンジントルクが大きくて余裕がある場合は、少しアクセルに触る程度で十分な加速をするので、条件によっては意外と好燃費をマークする。
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12−3:車種・構造・空力で変わる

 駆動方式で燃費は変わる。
A:一番燃費に有利な駆動方式はFF次いでFR、MRなどが続く
B:二番目は可変駆動方式(GT-Rに代表される4輪配分駆動、場合により後輪駆動に変化)
C:常時四輪駆動方式
FF方式の場合はエンジン回転(力)をそのままミッション側に伝達できるので、フリクションロスを少なく出来る。FR方式はリヤデフのリングギヤ&ピニオンギヤで90度角度変換を行う際に大きなフリクションが発生している。4輪に駆動力を伝達するためにはフロントデフとリアデフが不可欠となるが、デフそのものの構造から大きなフリクションが発生するためと車両重量増加のダブルパンチで燃費的には不利となる。
乗用車とワンボックスでは空気抵抗が大きく異なるので、長時間の高速走行では大きな燃費の差となって表れる。
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12−4:動力伝達方式(MT・AT・CVT)で変わる
車好きならば、伝達ロスが少ないマニュアル車で上手に運転する方がATより燃費が良いことを熟知している。走りの面だけでなく燃費的にもMT車は有利となる。AT車はトルクコンバーターの構造上、直結でないので絶えずロスが発生している。ゆえにロックアップ機構等を設け、少しでも燃費を良くするための工夫もされている。CVTになるとベルトドライブになり、更にロスが少なくできるので燃費的に有利になるが、まだまだギクシャク感など違和感を覚える車もある。
このように、ATの場合、トルクコンバーターの構造でロスが生まれるが、このロスは燃費だけでなく、エンジン出力に対してもロスがある。高性能添加剤をエンジンに添加してエンジン自体のレスポンスがアップした場合でも、その効果は全て走りには反映されない。この欠点は添加剤に限らずATを介する全てのチューニングアイテムに当てはまる。要は回転上昇・下降に100%追随出来ない点が劣っているのである。「スポーツドライビングを愉しみたければMTを・・・」という選択の理由もここにある。動力伝達も大パワーをいかに安全確実に路面に伝えるかが研究され、トラクションコントロール、4輪駆動配分やアクセルバイワイヤーなど新しい試みが模索されている。人間の感覚でなくコンピューターが勝手に判断するので、添加剤での体感度は低いのではないかと予想される。
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12−5:オイルや添加剤が燃費に与える影響について考察する

 オイルや添加剤は効果的に作用する品物であれば、燃費向上にハッキリと表れてくることが多い。ただし、今まで解説してきたように即効性の製品と、遅効性の製品では結果は異なってくる。人間の特徴として新しく製品を試す際には、意識して運転を変えて変化を見る場合が多い。普段より多くアクセルを踏みこみ、急加速を試したくなるのが人情だろう。だがこの急加速を多用することにより、燃費は一時的に悪化する。このことを考慮にいれないと「燃費が悪くなった」と結果を出してしまうこととなる。即効性であれば添加直後に最も効くので相殺しても極端な悪化にはならないが、遅効性の場合は効果が発揮される前に、この「テスト」を行うと燃費が悪化しているように感じられ、次第に普段の運転に戻る頃には、添加成分も効果を発揮し始める。作用が進行して内部的変化が行われてゆけば、自然とエンジン性能は高まり、その結果として燃費に表れる。つまり効果にタイムラグがあると考えればよい。おおむね給油3回目以降より最大効果を発揮し始めることさえ理解すれば無理に効果を試す必要はない。
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12−6:高性能製品でも燃費アップしない場合がある

燃焼効率をアップしたり無駄なフリクションロスを取り除けば、燃費は必然的にアップする。ところが超高性能オイルや超高性能添加剤を使用した場合は、100%この方程式に当てはまらないケースが出てくる。

A:自分の予想している感覚を超え、車が先に前に出てしまう。
B:気持ち良く加速し、高回転も伸びるので、ついつい我慢できなくなり回してしまう。
C:自分では以前と同じに走っているつもりでも、自然とペースアップしてしまっている。
このように以前より速いペースで走行すると通常は仕事量が増加し燃費悪化を招くことになる。多くの人が「燃費を気にしないでアクセルを踏んでいるのに燃費は変わらない」と報告してくる。自動車の知識が深い人ほど「凄いことだね」と理解を示す。詳しくない人は反対に「燃費が良くならない」と不満を訴えてくる。

反面、燃費だけを気にする人の運転を観察すると、幾つかのポイントが浮かび上がってくる。
1:アクセルはゆっくりゆっくり踏み込む。
2:50〜60km(走行ペースにあわせて)速度が乗ったら一度アクセルを戻す。
3:前の車との車間距離を開けておき早め早めにアクセルを戻し完全に停止する状況を避ける。
4:できるだけ急加速、急ブレーキなど急激なアクセル操作を避ける。

自動車を楽しむという点では同じなのだが、この両者は、まったく逆のスタンス(考え方)であるということを理解しなければならない。(どちらも個人の愉しみ方であり否定するつもりはない)ただ、多くの高性能オイルや高性能添加剤を求める理由は「快適な走りを愉しむ目的のために」使用する人がメインである。従って、燃費にとらわれずに走ったにも関わらず、結果的に良好な燃費をマークするのが理想的である。私の場合は走りが1番、耐久性2番、燃費が3番という優先順序となる。ガソリン価格が高騰してきているので、燃費を良くする走行を心がけてゆくことは社会的使命となってきている。ドライスタートに効果的な当社の製品使用であれば無駄な暖機運転をなくすことと停止直後の無駄なアイドリングを無くすことで燃費向上が期待できる。できれば個人的にはターボタイマーなどOFFにして欲しいと願っている。
 
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第十三章 エンジンオイル消費について深く掘り下げ考察する
   

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