第十三章 エンジンオイル消費について深く掘り下げ考察する
エンジンオイルを交換して数千km走行した後にエンジンオイルを点検してみるとオイルが減っていて驚くことがある。そこで「エンジンは大丈夫か?」と急に心配となり時間が経過するほど頭から離れなくなってくることになる。この辺りの感覚や考え方は、その人の経験や技術的知識度により大きな格差が生じる。オイル消費の背景は燃料消費率(燃費)と同様に単純ではなく複雑な要因が重なり合って出てきた結果なのだ。オイル消費量が多いから故障なのではなく、どこからが異常数値なのかを見極める難しさがプロでも付いて回る。その背景を私の経験を生かして詳しく分析してみると・・・。
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13−1:減る車と減らない車の両タイプがある

 その人が今まで、どんな車を乗り継いできたかが大きな意味合いを持つ。たまたま、愛車のオイル消費率が少なくて1年間1度もオイル量のチェックなど行ってこなかった人と、中古の外車を購入して絶えずオイルを補充しながら車生活を楽しんできた人とではオイル消費に対しする認識に大きな格差が生じてくる。前者は「オイルは減らないものだから一年に一度オイル交換を依頼すればいい」後者は「オイルレベルは定期的に点検しなければだめで減っていたら補充すればいい」となる。一般的には、主婦などはエンジンオイルを交換しなければいけないとか、エンジンオイルが減ることなど無関心な人が多い。中には「エッ、エンジンオイルは交換しなくてはいけないの?」という人まで居る。この背景は日本車がメンテナンスフリ−化を徹底的に推進した結果、何も点検しなくても大事なく使い続けられる丈夫な車に仕上がっていることと大きく関係していると思われる。私がマイカーを手に入れた時代であれば始業点検でエンジンオイル量、冷却水量、タイヤ空気圧のチェックは常識となっていた。それがいつしか誰でも大きな注意を払わなくても安心して運転できる車に進化して現在に至る。少し前までは車検整備でブレーキを分解点検し残量が少なければパッド交換を実施し、次の車検までの2年間を問題なく使用できるように整備していた。今はガソリンスタンドなどでも1日車検を受け付けるように変化し、ブレーキパッドの残り量が少なくなっていても車検に合格する自己管理時代となっている。その背景として、ブレーキパッドが磨耗限度まで到達すると、金具がローターと接触して異音発生して点検交換を促したり、計器盤に警告灯が点灯してドライバーに教えるように変化した。
 日本車でもスポーツカーやロータリー車、走行距離が6万KMを越えた車だとオイル消費が多くなる傾向を示す。また、マイナー前だとオイル消費が激しいがマイナー後になるとオイル消費が急に少なくなった車種も見受ける。オイル消費のクレームをフィードバックしてピストンリングを改良したりした対策(リング張力の変更等、後で詳しく解説)が盛り込まれたり、ピストンが変更されていたりする。ロータリー車はアペックスシールにオイルを吹きつける装置で潤滑しているためにオイルを多く消費する。反対に一般的な車であれば、ほとんど減らない車が普通である。古い外車に一度でも乗った経験があれば「走ればオイルは減るものだ」という認識が自然と身に付くことになる。私も古い外車、プジョー604、VWビートル、VWカブリオレ、シトロエンBX、BMW318、フェラーリ328等、色々な中古外車に乗ってきたが、一番オイル消費の激しい車はシトロエンBXとフェラーリ328であった。極端に消費したので毎日乗る前にオイルを点検補充するのが習慣となった。500km走行したら500cc補充を必要とした。うっかり点検補充を怠ると、レベルゲージの下限より下にいってしまう。これは古い外車だから仕方ないと捉えるか、故障と捉えるかは判断が難しいが、シトロエンBXは一般車なので正常値ではなく、フェラーリは正常値と判断できる。しかし、調子が良く燃費が良好であれば補充して使い続けることが出来る。ハッキリと目視で白煙(実際は少し青白く見えるしオイルの燃える匂いがする)が確認できた時には、OH(全分解)する必要性が出てくる。この例が示すように中古車であれば複雑な要因が更に関連することになる。これらを大雑把に分類すると下記のように分類できる。
1:新車の日本車(スポーツカー、ロータリーを除く)なら、オイル消費はほとんどない。
2:スポーツカーやロータリー車は新車からオイル消費が多い。
3:日本車(分類1)でも中古車となり10万km(使用条件や、当り外れ、メンテナンス状況により大きく変化する)を越えて、どこかで急に消費が増大することがある。
4:新車の外車は年々オイル消費が少なくなり車種によっては日本車と変わらない。
5:日本車の分類2と同じで、輸入スポーツタイプの車種はオイル消費が多い傾向を示す車が多い。
6:古い外車は日本車より耐用年数が長く長期間使用されるためにオイル消費は多い傾向を示す。
このように減る車は減るし、減らない車は全然減らない。減るからといって故障とは言えない場合が多いのだが、明らかに白煙を噴き、エンジンの調子悪いと感じ取れる時は早めに専門家の診断を仰ごう。何でも自分で判断するのは危険である。しかし「オイル消費が気になる」と訴えれば、「お客様、OHすると大金が掛かるので、新車を購入することをお奨めしまう」と提案されるかもしれない。もし私が自動車販売店に勤務していたら同じような答えになってしまう。
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13−2:オイル消費率は生産国により設計の考え方が異なる

 前項で解説したように日本人気質はオイル消費を極端に嫌う傾向を示す。自動車先進国のアメリカ、ヨーロッパでは日本人と気質が違う。気質が適切な表現でなければ根本的な考え方の違いと言い換えたほうが適切であろう。日本車のようにオイル消費が少なければ1年間1万kmを手間いらずで使用できる。私がよく使う言葉で「メリットと背中合わせに必ずデメリットは存在する」ということを考えてみると「手間が掛からない」がメリットでデメリットは「次第に劣化してゆくオイルを交換するまで使い続ける」という図式になる。欧州車設計の考え方は正反対で「オイルは減っても良い。減った分の新油を補充することにより劣化したオイルをリフレッシュできる」メリットがあるという考え方をする技術者も多いと聞く。(全メーカー、全技術者が全て同じ考えではないと思うが)言われてみれば「なーるほど」と妙に納得してしまう。但し、この辺の事情も詳しく観察をしてみると消費者がどちらを強く望むかで販売に大きく影響することから欧州車も年々、日本車を強く意識した方向に転換してきているように見受けられる。誰でも面倒なことより気楽に乗り回せたほうが便利だと思うに違いない。石油製品が品不足となり価格が急上昇してきている現状や、地球環境に優しいことなどが優遇され国際的関心が高まってきている現状では、オイルは補充しないで長く使用することが強く求められている。このような国際的環境も度外視できない。
 日本人は「こだわる」民族気質だと思うのは、少し前までは1000kmの馴らし走行をしたらオイル交換を実施する車好きを多く見かけた。流石に最近は少なくなってきたが「安いオイルをこまめに交換」という人も今だに多く存在することも事実だ。ガソリンが高騰している割には同じ石油製品であるオイル類の値上げ幅は少ないが、中国、インド、その他の国で、急速に石油が消費され奪い合い状態となってきているのに目を付けた巨大投資会社が投機に走ったために更なる価格上昇を招いている。この傾向は今後も更に強まる可能性が高い。私が高性能オイル=ロングライフサイクルの製品を開発販売した背景には、今のような時代が到来することを15年前に予測していたことも要因である。今後は更に石油は貴重なレアメタルのような存在になってゆくものと予想される。すると廃油のリサイクル化も今よりも促進されるだろう。それとも燃料電池車が急速に発展すれば社会情勢は一変することだろう。
 安いオイルをこまめに交換するメリットは「ダメージを防ぎ車の耐久性アップに繋がる」「オイル消費が多くてもローレベルを割り込む前に交換してしまうので気にならない」デメリットは「資源の無駄使い」。その対極に位置するエストレモ製品のメリットは何か?人によって違うが「気持ち良い走りが得られる。これは金額では図れないメリットだ」「好調子が長期間維持できる」「トルク不足、メカニカルノイズ減少など欠点が改善できる」など多数のメリットを持つ。では、デメリットは何か?「AT車で重い車ではエンジンブレーキの効きが弱くなる」「オイル消費する車はオイル消費が余計に気になる」の2点。
スポーツタイプの車種で高性能オイルを試してみたが2000〜3000km走行したら、オイル性能劣化(オイルのタレ)してしまったという話題には事欠かない。3000km走行で500cc消費する場合、専門的にはオイル消費率は、500cc/3000km と書き表す。500cc消費に相当するオイルレベルは低下するわけだが何mmレベルが下がるかは車種によりオイルパン形状が異なるため変わってくる。この場合、オイル消費量としてはスポーツカーであれば普通であるが一般車であれば消費が多い部類に属する。
このようにオイル消費が多い車であっても通常の高性能オイル使用で2〜3000km走行でライフが尽きてしまい交換するのが一般的。だからオイル消費が多くても、あまり関心を寄せないまま過ごしているか見逃してしまうことになる。このような車で、当社の超ロングライフを誇るエンジンオイルに交換して距離にして3倍の9000km使用した場合は、一体どうなるのか?それほど難しい話ではなく、仮に消費率は何も変わらなければ 1、5リットル/9000km のオイル消費率と予測できる。オイル消費率そのものは何も変わらなかったとしても、以前のように一度も補充しなければ当然のことながらオイルレベルゲージの下限より更に低下してしまいレベルゲージにオイルが付着しない危険レベルまで下がってしまう。すると「オイル消費が激しいが大丈夫ですか?」とビックリして問い合わせてくる人が居る。また「貴社のオイルに変更したらオイル消費が多くなったが原因は何か?」と問い合わせが来る。この場合もオイル消費が多い車に一度でも乗った経験者であれば何事も起こらないし、詳しく説明しなくても3000km走行したら習慣でオイルレベルを確認して減っていればオイルを補充する。
当社のような超ロングライフを誇るオイルの存在を知らない人はプロ・アマを含め、まだまだ沢山いる。たとえ名前を知っていたとしても実際に体験したことがない人は「オイルは長く使ったらダメ」「そんなに長く持つ訳がない」と頭から否定する方も多く見受ける。だから「9000kmもオイルを交換しなかったら壊れてしまう!」と自分の経験でお叱りを受けることもある。プロもアマも、それまで生きてきた体験の中での結論なので、当社のオイルを一度も体験していなければ本当は何も言えない(解らない)のが真実である。高級なオイルでもスポーツ走行で9000kmも持つ市販オイルを見つけることは至難の技であることをオイル好きなら理解して(探し回ったり、他の人から教えて貰って)当社に来る方が多いので初めて使用すると素直に感動するだろう。普通に作ったら普通のオイルしか出来ない。特別なオイルは特別な作り方をしなければ製品にならない。従って、一般市販オイルの常識は、ほとんど通用しない。ある意味では使った人だけが共有できる領域があるのだ。
※ロングライフとオイル消費は密接に関連するので、弊社オイルをロングライフオイルの例として例として記載

参考までに20年前のフェラーリ328の取扱説明書には、次のように記載されている。

オイルのチェックは、エンジンが完全に暖まった状態でエンジンを停止し、15秒後にディップステックB(追記:レベルゲージ)で行う。
オイルレベルは、MINとMAXの間に保つ。
(オイル消費は 1〜2/1000リットル/KM)
交換時期 初回2000KM 以後5000KM又は6ヶ月毎
オイルフィルターは、必ず純製品を使用
初回2000KM  以後10000KM又は12ヶ月毎
オイル交換は、オイルが完全に暖まった状態でオイルパンのドレーンプラグより行う。

この説明文の中に、幾つかのポイントが隠されている。
ポイント1:エンジン始動前ではなく、エンジンを始動して完全に暖まった状態でエンジンを停止して15秒後に見る。
エンジンを始動するとオイルはエンジン各部に圧送されオイルパンのレベルは低下する。エンジンを停止してからの秒数は自動車メーカーや車種によって秒数が微妙に異なっている。時間を少し置いてからレベルを見る目的は、エンジン上部(カムシャフト関係)に給油されていたオイルがオイルパンにタラタラと落下する時間を表しているので厳密にはエンジン形式で少し異なってくる。また、フェラーリ328のオイルパン内にはバタフライバルブが設けられていて水温・油温(どちらか不明)が設定温度まで上がらないとバルブが開かないためにオイルレベルが大きく変化してしまうという話を聞きいた。フェラーリ348でも同じエンジンなので同様なことが起きるらしいのだが取扱説明書には記載されていない。この例が示すように疑問を感じたら必ず愛車の取扱説明書で確認するか、それでも解らないときは購入した店に問い合わせてみよう。

ここで一般車の実話を紹介しよう。
「エンジンオイルを交換してきたので弊社添加剤を添加して欲しい」との依頼があり、オイルレベルを確認してみるとMAXより、何と10mm以上も多く入っていた。そこでMAXに合わせるためにオイルを抜いてみると約1リットルも抜けた。古いオイルを抜いて新油を入れ、少し時間を置いてからレベルゲージを確認するのが一般的であるが、少しでも作業を急いで早めに確認すると完全にはオイルパン側に落ちきらないために時間が経過してから確認するとオイルレベルが異常に多くなっていることは頻繁に発生するので注意が必要だ。また、新油は汚れていないために、レベルゲージの構造によっては非常に確認しずらいゲージがあり、誤って多く入れてしまうケースも見受けられる。これらの実例が示すようにオイルレベルの確認方法が一定でないと正確なオイル消費を把握しずらくなる。できるだけ路面の傾斜の無い平坦なところで、できるだけ同じ条件で確認する習慣を身につけよう。ただし、エンジン始動前と始動後のレベルの違いを把握しておけば、出かける前の冷間時にレベル確認を実施しても何等問題はない。(フェラーリのような特殊な車は除く)走行後の測定よりもレベルは上がっていることになるから、MIN(下限)近くになければ大きな支障はない。多少は多目にレベルゲージに出てくることだけ解っていればよい。MIN近くであれば暖機後の測定では更に下回る恐れがあるので早急に少しでも補充するか、正規方法でレベル確認を実施しなければならない。
ポイント2:オイルレベルはMINとMAXの間に保つ。
オイル交換したら上限ラインまで入っていないと気が済まない人。又は不安で不安で落ちつかなくなる人も見受ける。オイル消費が多い車なら上限付近が安全だが、オイル消費が少ない車であれば真ん中まであれば安全圏である。この文章の意味はMINを下回らなければOKで不都合はないだろう。但し、スポーツカーなどで過酷な走りをする人や、ハイパワー車、チューニングカー、オイル消費の多い車などは、常に真ん中ラインより上になるように絶えず補充を心がけるのがベストな方法となる。 逆に考えると、オイル消費の少ない車であれば中にはオイル交換をする必要性を感じない人も居て、平気で3万kmとか使用を続けるケースも見受ける。どんなオイルでも劣化の進行度合いが異なるだけで劣化自体は避けられないために、どこかの距離&期間を境に、次第にダメージを与えることが考えられるので、少し得をしようと伸ばし過ぎるのは、かえって後で大損するかもしれない。そこで話は少し変わるがオイルが劣化しにくい車と劣化 しやすい車があることを多くの人が知らないので、ここで説明しておきたい。
● オイルが劣化しやすい車
1:排気量が小さいほどタレが早い。
2:高回転が回る車ほどタレが早い。
3:ターボ、直噴、等、排気管が真っ黒な車はタレだけでなく汚れ、スラッジが多い。
4:改造車、コンピュター改造車、グッツを沢山装着し過ぎている車。
5:エンジンの調子が悪い車ほど、タレが早い。(多少は走行距離も関係してくる)
6:上記項目に関連するがメンテナンスに無関心、あまりメンテナンスを実施しない車。
7:古い車より、新車ほど排気ガス規制が厳しくなり、その結果、オイル汚れ、ガソリン希釈率が減少している。
8:オイル消費が少ない車。(正確には劣化しやすい車とは異なるが、無知な人は長期間に渡って使い続ける。どこかで汚れやガソリン希釈など、ダメージが急に増大する)
○ オイルが劣化しにくい車
全て上記と正反対の車。「8項:オイル消費が少ない車」の正反対は「オイル消費が多い車」となる。あまり気にも留めないが、補充によってオイルはリフレッシュされ、かえってエンジンにとって優しい環境を作っていることになる。
上記項目にプラスされ、オイル銘柄によるオイル性能の劣化度合いの違い、生産の精度誤差(当り外れ)、運転状況(絶えず急加速する、やさしくアクセルを踏む)、使用条件(通勤で使用する、長距離主体、たまにサーキットに行く等)、地域(絶えず渋滞する場所に住んでいる、山の上に住んでいる等)気候(沖縄と北海道では違う、夏と冬でも少し違ってくる)などが複雑に相関し、オイル消費は決定される。この図式は燃費の条件と、似通っている。
ポイント3:オイル消費は 1〜2/1000リットル/KM。
この表記の意味合いは、1000KMを走行したら、オイルが1〜2リットル消費することを表している。実際のオイル消費もエストレモAZX1極 を使用して、500KM走行したら約500cc減っているが20年間経過したことを考慮すれば極めて良好な消費率と判断できる。このような外車に乗ってオイル消費の多さを体験している人なら何も驚かないが。日本車から始めて乗り換えた人は非常に驚くことになる。だから、古くなった日本車でもオイル消費が多いからといって即座に故障と考えることは大きな間違いである。次の13−3で詳しく解説する。
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13−3:オイル消費のメカニズムを分析してみる

基本的には日本車は世界一、オイル消費が少ない車が多いのではないかと私は感じている。平均的に日本人のこだわり気質は高く、この気質が世界に通用する良質な製品を開発製造することに繋がっていると考える。少しでもオイル消費が多いと「オイル消費が多い!」と製造メーカー(ディーラー)にクレームを付ける。特に走行距離の多いタクシー業界などもオイル消費には敏感である。すると、メーカーはシリンダー最終仕上げ工程のホーニング砥石の番数を細かい粒子の物に変更してテストを重ねたりして改善に踏み切ることがある。一般的に砥石の目が粗ければ砥石の目(専門用語でクロスハッチ)の溝にオイルを保持するので良好な潤滑が出来ると従来から言われてきている(これは一般常識であって高度な潤滑には必ずしも適合しない)クロスハッチの溝の深さは古い欧州車では当たり前であった。また、ポルシェ空冷6気筒エンジンはシリンダーに小さな丸い凹みが沢山設けられていてリングの潤滑を積極的に行おうとしている設計を採用していた。

この他の要因もいくつか影響してくるのでオイル消費の要因を列挙し詳しく解説を加えよう。
A:オイル上がりする要因
1:クロスハッチの粗さ。
 基本的にメーカーが開発で盛り込むことはシリンダー側にクロスハッチ、ピストン側にコーティングなどを施し、ピストンリングやシリンダーの磨耗損傷を防ぎながら最小限のオイル消費率を達成しようとしてくる。オイルの潤滑能力を高めてゆくとクロスハッチのオイル保持能力など、さほど重要ではなくなってくる。ご承知のようにシリンダー及びピストンリング当り面(側面)が輝いてくる(特にシリンダーは材質により必ずしも鏡面になるとは限らない)中途半端な昔ながらの知識しか持たない人は「焼きついてしまうから、早くホーニングしたほうがよい」とか、「削っているのでクリアランスが大きくなってしまう」と思い込んでいる。実際に使用している人は「調子は落ちるどころか走行距離が伸びるほど調子は上向きなんだ」と不思議に思う。「鶏が先か卵が先か」の論争と似ていて、焼きつくような潤滑であれば擦動部の鏡面など保持や維持等できないで荒れてしまう。高度な潤滑が出来ていなければ鏡面などあり得ない。この場合は、鏡面が先ではなく良い潤滑が先となる。ここが理解できない。また、鏡面は削られたら出来るものではなく高度に維持されているから輝いているので反対にクリアランスは長期間に渡って大きく変化しない。だから実際に軽四輪で30万KM(OH無)達成者も現れてきている。どんなに良い潤滑をしてシリンダーが輝いていても5万km〜10万kmと距離が増えるに従って、急にオイル消費が増大することがある。その真の原因はシリンダーの磨耗やピストン損傷のトラブルは稀で(性能の低いオイルや過酷な使用で発生する場合も確率は低いがあり得るが)、項目12の燃焼(爆発)の繰り返しで発生するカーボンスラッジ(排気菅内の汚れと関係する)ピストンリング固着が進行することが原因の大部分を占めていると判断できる。詳しくは、項目12で解説する。
2:リング張力(シリンダーに押し付ける力)
 ピストンリングは弾力が与えられ軽くシリンダーに押し付けられていて、この押し付ける力の強さを張力と呼ぶ。レースエンジンなども、フリクションを低減するべく弱い張力の物を組み付けるとフリクションは低減できても、密閉度低下により、オイル消費が増大したり、トルクが低下したりしてしまう。この兼ね合いを見て妥協点を探る。この味付けが難しい。
ロータリーエンジンも同様で、アペックスシール&サイドシールの押し付け力と材質がポイントになってくる。押し付け力が強ければフリクションで無駄なエネルギーを食われてしまうので旧車の初期RX7(12A型エンジン)やFC-3S(13B型)の頃のロータリの燃費は最悪でした。最初は弊社添加剤がこんなにロータリーに有効とは思いもしなかった。回転運動だからフリクションは少ないと頭で考えていたからである。実際は繭型の内側をアペックスシールが擦動して回転しているのでレシプロエンジンより大きなフリクションが発生していると推測できる。最も、FD型になってからはアペックスシールの変更があり大幅に燃費が向上した。ロータリーエンジン初期開発でチャーターマーク(まゆ型をしたケース内面を三角ローターの頂点に装着されたアペックスシールが摺動するとケース擦動面が火傷のように損傷してしまう現象)が発生し大きな開発の壁となった。そのため、アペックスシールの材質や押し付け力など大変な努力と開発時間を費やし開発された。一つにはアペックスシール潤滑のためにオイルを強制的に吹きかける装置も潤滑に大きな働きをしている。そのためにレシプロエンジンより多いオイル消費率となるため3000〜5000km走行したら必ずオイルレベルを確認し、補充しなければならない。
3:リングの厚み
 省燃費が命題となれば少しでもフリクションを低減しようと知恵を絞ることになる。ピストンリングの厚みが1mmよりは0.5mmと半分になればフリクションは確実に減少するが、その見返りとして密閉度や耐久性に影響を及ぼす。トライ&エラーで最適値を模索する。実験では経年変化やエンジンの劣化など含め100%予測できないために、発売後にクレームが多く寄せられれば更に対策が盛り込まれ次第に完成度を高めてゆくことが多い。名機と呼ばれるエンジンは所期の設計の完成度が高い機種で、沢山の機種の中で、ずば抜けて出来の良いエンジンが生まれることがある。
4:ピストンリング合口隙間の大小
 あまりにも合口隙間が小さいとリングが熱膨張した際に、逃げ場所が無くなる。この隙間はシリンダーの大きさにより変化するので、シリンダーのテーパー度、真円度などの加工精度も重要となってくる。また、トップリングの合口位置とセカンドリングの合口隙間をずらして吹き抜けしないように組み付けるのが重要組み立て基準となっている。この隙間はピストンリングが磨耗したり、シリンダーが磨耗することにより自然と大きくなってしまうので、多少はオイル消費に関係してくるが要素としての割合は小さい。
5:リング本数
 最新のエンジンは、フリクションロス低減=燃費向上を目的として、従来の3本リング構成(圧縮リング2本、オイルリング1本)から、2本リング(コンプレションリング1本とオイルリング1本)に変更したエンジンも発売されている。私も日産大森時代に当然ながらセカンドリングを抜いてテストしている。3本リングから2本リングにすれば確かにフリクションは低減すると誰しも考える。でも、その見返りとして圧縮漏れ、オイル消費が増大してしまうデメリットが浮かび上がる。そこでリング張力(シリンダーに押し付ける力)を強くすれば、結局は1本減らした意味合いがなくなってしまう。例えば、カメラの三脚の重量を軽くしようとして2脚にしたら簡単に倒れてしまい使い物にならない。2脚でも下側に10cmほどの円盤を取り付ければ一応は立つだろうが少しの風で倒れてしまう。この例が示すように3脚と2脚でも、たった1本の違いでも凄く大きな差が出てくる。ピストンリングの本数に関しても、私の経験でも、三脚と同じだった。ピストンリングに限らず、部品を取り付ける設計の際に2本の10mmボルトで固定するより、6mmボルト3本で固定した方が遥かに優れているが、こんな経験値をコンピューターが計算してくれるとは限らない。このように机上だけでイメージするのと実際に試験した結果とは、このようなもので、いかに改善策を盛り込めるかに掛かってくる。また、日産VGエンジンなどは、ピストン側面の面圧の掛からない部分を小さくしてフリクション低減を図っている。実際は、このように昔は見逃していた部分の改善を図ることの方が効果は大きかったりする。
6:ピストンクリアランス
 ピストンの材質はアルミ合金製が多い。スポーツカーやレースエンジンのピストンは鍛造製の採用が多い。私がTSサニーの1300ccエンジンのボーリングを依頼する担当をしていた際には、ピストンクリアランスの指示は8〜9/100で依頼していた。表記を変えると80〜90ミクロンのクリアランスとなる。この寸法は常温でピストンを片側に押し付けた時の最大寸法だから、片側で40〜45ミクロンとなる。ノーマルエンジンの場合の数値はエンジンによって、かなりの差があるが一般的には20〜30ミクロン位と小さい。鍛造ピストンを組み込んだスポーツタイプエンジンの数値は一般車とレースエンジンの中間的値となろう。従って、オイル消費が少し増大することになる。レース用エンジンでは「オイルが少し燃えている=ピストンクリアランスが大きいエンジンは壊れない」という通説がベテランメカニックの間で囁かれていた。オイル消費を少なくして密閉度を向上しようとする目的でピストンクリアランスを狭くして実験すると結果はどうなるのか?ピストンが膨張してシリンダーに接触して大きな傷がピストン側面とシリンダーに発生し、結果的にオイル消費が増大し、フリクションも増大するという反対の結果を招く。この匙加減と、狭いクリアランスを可能とする新技術の開発が重要となってくる。スポーツカーを購入する人の中にはサーキットのスポーツ走行を楽しんだりする人も存在するので、一番過酷な条件でピストンが最大に膨張した時にもシリンダーに接触損傷させないためのマージンを設計値に盛り込む事になる。このようなスポーツカーを購入し、エストレモ極オイルを使用すると摩擦が軽減され油温が約15℃も低下してしまう。一般の高性能オイルと呼ばれるものでも油温低下は約5℃前後が多い。油温が15℃低下する弊社の最上位グレードオイルを使用するとフリクション低減効果とトルクアップ効果で、アクセル踏み込み量が減るために、あまり高回転使用せずに、今まで通り走れるので(使用者の表現で多いのはアクセルに軽く触っているだけで車が勝手に前に出てゆく感覚)、ピストン熱膨張は抑制され、結果としてピストンクリアランスは、いつもより広いままで使われることになり、その結果、オイル消費が増大してしまうこともある。逆に激しく走行すると潤滑能力の低いオイルでは油温が適正値より大幅に上昇し、ピストンクリアランスの余裕は無くなりシリンダーと接触し、お互いに傷つきあいオイル消費が増大したりすることが多いが、弊社最上位グレードオイルでは逆にクリアランスは適正値に近づくために、オイル消費は普通の値(標準値)に戻ることがある。
7:ピストン材質と形状
 ピストン材質と形状は設計により大きく変化する。エンジン開発者が心血を注ぐ部品でもある。潤滑能力を高めるためにピストン側面にモリブデン・コーティングを施したり、ミクロの溝を設けてオイル保持能力を高めたりアイデアを傾注している。ターボ車であれば頭部にセラミックを焼き付けて耐久性アップを図ろうとしたりする。ピストン形状は設計者にとって心血を注ぐ場所である。アルミ合金のピストンは高温の燃焼熱の影響を直接に受け止め膨張する。そのために頭部の直径は膨張を想定し小さく作られ、少し楕円形に作られている。その理由は同じく熱膨張率を計算に盛りこみ爆発圧力を受け止めるピストンピン軸受け部分の肉厚は厚く作られるためである。頭部より下側のスカート側にゆくほど直径は大きくなっている。また、少し楕円形に作られている。ピストン最大寸法はピストンスカート部(下部)のピストンピンと直角方向で、ピンを中心として首を振るので、その動きをピストンスカート部が抑制する働きを受け持っている。数十年前から、オイルをシリンダー壁に吹き付けるノズルを設置してシリンダーに強制的にオイルを噴霧してピストンの冷却とシリンダー&スカート部の潤滑を行うエンジンが多くなった。レース専用エンジンで過酷に使用するほど、ピストン側面(ピストンピンと直角方向の爆発の力を受け止める面)がシリンダーと接触して縦傷が入ることが多い。馴らし運転を終了したら一度OHし、細かい耐水ペーパーで強く接触した部分を修正して組み付ける体験をしてきた。一般道路をメインに使用したノーマル純正仕様エンジンでも同様に側面が傷ついているエンジンも機種によっては多発する。これらも含めてエンジン内部はOHしない限り見ることができないので、少しメカに詳しい人は想像を逞しくして心配になってくる。
8:エンジン常用回転数
 仮にピストンが上下動する1工程で同じ量のオイルが燃焼室側に上がって燃焼したとすると
その?cc×?回転数となるので、常用回転数が高いほどオイル消費率は高まる計算となる。しかし、実際には、項目1〜12の要因も大きく影響してくる。その中でも項目6のピストンクリアランスの影響が大きいと考えられる。つまり、エンジンを酷使するとオイル消費は少ないが回さないとオイル消費が多くなるという従来の常識と反対の現象も報告されているからだ。だから一概に決め付けることではなく、結果的に、オイル消費が多い車と少ない車があると考えたほうが現実的である。新車でも中古車でも購入して5000kmも走行すれば、オイル消費が多い車なのか少ない車なのか、すぐに結果は出てくる。エンジン常用回転数は最初の設計値である最高回転数とトルクの出方でほぼ決まってくる。勿論、運転方法の差が一番大きいことは間違いがないが。最高回転数が6000rpmのエンジンと9300rpmの常用回転数には大きな開きが出てくる。もし、同じリング張力であれば回転数が高いほど擦動抵抗が増すことになる。最も、一般的には回転数が低いエンジンほどロングストロークで低い回転数で最大トルクを発揮する。従って最高回転数が高い車ほどリング張力を弱くしないと擦動抵抗が大きくなり過ぎる。このように車の性格の違いもオイル消費に深く関係してくる。
9:オイル粘度
 液体の基本特性として、柔らかい粘度はサラサラしているので漏れ易く、固くなるほど漏れにくくなる。オイル粘度も、まったく同じ意味合いを持つため、オイル消費が多いのが気になれば5W−30を10W−40など、後ろ側の数字が多い(固い)粘度の物に変更してみよう。前側粘度は冷間時の粘度を表すために無視してよい。固い粘度だと回転上昇が重く感じる人もいるがピストン密閉度は向上するために、トルクが出るために乗り易くなるケースも出てくる。この辺の感覚は車種や運転方法、ピストンクリアランスなど影響するので、自分で試して、自分に合った粘度を探し出すことを勧めます。オイル消費が多い車を根本的に治そうとしたら、エンジンをOHしてピストンやピストンリング交換やシリンダーホーニング等を実施しなければならないが、元もとの設計で、ほぼ決まってしまう要素が大部分なので、そのエンジンの基準的オイル消費にしか回復できません。だから、オイル消費の多い車は、オイルの減りをチェックして減った分を補充するか、少し固めの粘度に変更する他に対処方法は二つの選択肢しかない。
10:オイル劣化具合(潤滑性能低下、汚れ、ガソリン希釈など)
 弊社製品に代表されるようなロングライフオイルを長期間使い続けると、5〜6000km過ぎてから、急にオイル消費が早くなったことを感じる車も出てくる。特にターボ車やコンピューターチューンを施した車、小排気量車などに起こることがある。当社のオイルは潤滑能力の低下は極めて少ないがガソリン希釈を完全に防ぐことは出来ない。ガソリン希釈とは混合気を圧縮する際に、燃焼室側からピストンリングの間を通過してオイルパン側に漏れ出した未燃焼ガス(ブローバイ)によりオイルはガソリン(混合気を圧縮する工程でブローバイガス中に極少量が含まれる)で希釈(薄められ粘度は低下する)され、今度は排気工程で排気ガスを押し出す際にカーボンにより汚されていく。従って、走行距離が多くなるほど自然と粘度は低下し汚れる。粘度低下が起きれば項目9で説明したように密閉度は低下して燃焼室側に残るオイルは加速度的に多くなる。このように二つの部屋(燃焼室とオイルパン側)は、互いに完全に密閉された状態ではなく(完全に密閉しようとしたらピストンは重くなって動かなくなる)例えると、小さな通路で繋がっている関係だと思えば理解しやすい。
オイル銘柄を変更したらオイル消費が変化(多くなった、少なくなった)することもあるが、これらも一概に減らないオイルが良いオイル、減るオイルが悪いオイルと判断しがちであるが本当は間違っていて、下記に示すような要因で変化していると考えられる。
A:表記上オイル粘度は10W40とか同一でも、プラグ熱価と同様に、まったく同一でなく少し粘度の違いが影響してくる。
B:潤滑能力の違いで他の項目で解説したように摩擦(フリクション)の違いで油温が変化し、その結果、同一条件下でも粘度は変化し、ピストンクリアランスも変化する。
C:オイル交換することにより、それまで使っていたオイルがヘタって(ガソリン希釈、汚れも含めて)いた訳だから、新品に交換すれば、その差が交換直後ほど差となって出てくる。
11:シリンダー&ピストンリング磨耗損傷(中古車)
 オイル総合性能が悪いオイルを長期間使い続けたり、オイル交換をあまり実施しない(寿命を越えたオイルの使用)など悪いメンテナンスを長期間行ってきたエンジンのシリンダーとピストンリングは磨耗が進んだり、傷ついていく。当然ながら、シリンダーとピストンリングは、両方のどちらかに問題があれば必ず相手側にも影響を及ぼす関係にある。めったには起きないトラブルだがリングが折れたり偏磨耗することも皆無とは言えない。普通はトップリングの断面形状は斜めになっていて、下側の面から当たるように設計されている。磨耗が進んでゆくと、べったりと全面に当たるようになる。また、分解して観察すると、非常に悪いオイルを使用した車や、エアークリナーを取り外し走行していた車は、リングに小さな縦傷が沢山付きますのでオイル消費も多くなるのは当然の結果である。悪いオイルの場合は艶消し状態で平面が磨耗していき磨耗速度も早くなる。弊社オイルを長期間使用したエンジンをOHした人が画像を送付してくれて、メッキしたようにリングやカムシャフトが輝いていたエンジンを何回か見てきた。(調子が良いのでめったに分解するケースは少ないがボアーアップやハイカムシャフト交換で分解した際は、多くのエンジンが輝いていた。シリンダー側は、輝くエンジンと鈍く光るエンジンと両方ある。これはブレーキローターと同様に材質により大きく左右されるからである。)エストレモ製品発売より17年が経過しているために走行10万km以上、10年間以上と長い間、車を乗り続け愛用する人も増えてきている。「ある距離を越えたら急にオイル消費が多くなったが何が原因なのか?」と聞いてくる人が居ます。エンジンを一度でも自分で分解している人なら理解度は高いのですが、エンジンOHを経験する人など、それほど多くは存在しません。だからオイルが急に減ることが不思議でしかたがないと悩むことになり、シリンダーが磨耗したのではないかと思いこんでも、それは無理からぬことでしょう。潤滑能力の高いオイルを使用し、10万km走行するくらいでシリンダーが異常に磨耗することはありません。真の原因は次に説明する項目12:ピストンリング固着で発生すると私の経験から判断できます。
12:ピストンリング固着(中古車)
 多くの読者を持つオートメカニックのエンジン分解写真を見たことがある人はたくさん居ることだろう。走行距離が5万kmを越えたエンジンを分解してピストンやピストンリングを観察してみると、一体どうなっているのだろうか? 
排気管の汚れ=燃焼室の汚れ=エンジン内部の汚れ=ピストン頭部から上部側面の汚れ という図式が成り立つ。最近の三ツ星や四ツ星のステッカーが付いている車の排気ガスはCO排出量は、ほとんど0%に近く、排気管内はとても綺麗だ。しかし、少し前の車、ターボ車、直噴エンジン、コンピューターチューンを施している車などの排気管内には黒い煤が沢山付着している。つまり、排気管の汚れが多い車で走行距離が多くなってゆくと、どんなに潤滑能力に優れたオイルであろうと「燃焼室の汚れ=エンジン内部の汚れ=ピストン頭部から上部側面の汚れ」を完璧に防ぐことは出来ない。勿論、私が突き止めたことは「高性能オイル程、燃焼効率は高まる」ので、燃焼そのものは改善され排気管の煤も減少してくる。それでも元々の燃焼が悪くて排気管が真っ黒に汚れるターボ車等で、走行距離が10万kmを越えれば、カーボンはピストン頭部からオイルパン側に吹きぬけているのでピストン頭部からリングとピストンのあらゆる隙間に侵入を繰り返し、長い年月を掛けて次第に蓄積を繰り返していく。そのピストン上下動回数は例えようもないほど莫大な繰り返しの結果。本来は、ピストンリングは収縮を繰り返し、シリンダーに密着して密閉度を保っているが蓄積が飽和状態に達するに従い、次第にピストンリング収縮を妨げるようになっていく。オイル消費がひどくて白煙を吹くようなエンジンを分解してみるとピストンリングは完全に固着してしまっていて動かない。従って、走行距離が多くなってきて、急にオイル消費が増えた車は、真っ先にピストン&ピストンリングのスラッジこびりつきを疑ってもよいだろう。しかし、根本的治療はエンジンを全分解(OH)して確認し、スラッジを全部除去しない限り回復しない。分解すれば、そのほかにも磨耗損傷している箇所を幾つか発見するのが普通である。しかしながら、サーキットで酷使したエンジンや、元もとの製造的外れ車や、その他の影響は予測不能である。また、高速道路をメインに走行した場合は燃焼状態が良好でカーボン発生は少なくなるのでアメリカなどでは6万km走行で、やっと当りが付いてきたと言われるが日本ではガタガタの軽四輪車を見受ける。スパークプラグが悪かったり、インジェクター噴霧が悪いなど見えないトラブルに無頓着で調子が悪いまま車を使い続けると燃焼は悪くなるためカーボン発生は多くなる。同様に渋滞路を多く使用したり、あまりアクセルを踏まない人なども、カーボン発生率は高まるため、5万km走行でも内部のカーボン蓄積量が多くなる車も出てくる。高速道路を走る状況はエンジンオイルにとって実は快適な環境なのである。車好きの中には月に1回は高速道路を走ると調子が良くなるという人もいる。

補足:ブローバイ、カーボン・スラッジについて説明
 これまでカーボンとかスラッジ、ブローバイガスという言葉が頻繁に出てきたので初心者のために少し詳しく解説する。言葉の意味が解らないと理解も進まない。
● ブローバイ又はブローバイガス
レシプロエンジンは1:吸入、2:圧縮、3:爆発、4:排気という4工程(4サイクル)が基本作動。1;吸入工程で空気とガソリンが混じりあった混合気を燃焼室に吸い込む(ターボ車では押し込まれる)次に2:圧縮工程で混合気を圧縮するためにピストンが上昇した際に少量の混合気はピストンリングの隙間から漏れてオイルパン側に漏れ出す。3:爆発(燃焼)で急膨張した圧力でピストンは急激に押されて力に変換されるが、この際も燃焼膨張した気体はピストンリングの隙間より少量がオイルパン側に漏れ出す。4:排気工程で燃焼後の排気ガスをピストンが押し出さす際も同様にピストンリングの隙間から漏れ出す。この4サイクルの工程でオイルパン側に溜まったガスをブローバイ又はブローバイガスと呼ぶ。従って空気中の成分、ガソリン、燃焼ガス、排気ガスなど、雑多な成分が混じりあったガスなので、未燃焼ガスと呼ばれることもある。
● カーボン・スラッジ
カーボンとスラッジは厳密には別の物である。排気管を指で触ると真っ黒な煤が指に付着する。墨汁のように真っ黒な煤をカーボンと呼び主成分は炭素である。このカーボンが先程のブローバイガスの成分やエンジンオイルや水分などと長時間掛けて生成されピストンやヘッド周りの内部などの高温な場所では焼かれて茶色に焼きついたり蓄積されてゆく。オイルパン内の底には次第にヘドロ状に生成された黒いスラッジとなり粘度も増し、最後にはヨーグルトに近いドロドロ状を呈す。
 エンジンを分解した際に、古いピストンリングを無理矢理、パキッと折ってしまい、折ったリングの端でピストンリング溝に蓄積したカーボンを削り取り掃除するのはスタンダードな整備テクニックである。5万km過ぎたエンジンなら結構なカーボン・スラッジが溜まっているので10万km、15万km、20万kmと距離が多くなるほど、凄いスラッジが蓄積してくるのでオイル消費増大は、いつ発生してもおかしくない現象である。その場合は、古い外車のように、こまめにオイル量をチェックして減った分を補充して使えば問題なく使えると思う。10万km過ぎた車なら、どこかのオイルシールやガスケットが痛んで、急にオイル漏れを起こす確率も高まってきますから、新車と違って気を配る必要性も高まってくる。また、10万km過ぎれば、バルブシート、バルブガイド、バルブ当り面など、オイル潤滑が行き届かない部分も次第に磨耗してゆき圧縮圧力のバラつきが出てきて、完全燃焼が乱され更なるカーボン発生=オイル消費に結びついていく。これらのバルブ関係の磨耗も初期の設計や、メンテナンス、メーカー、車種により大きな差が出てくるので20万km調子よくてオイル消費も、それほど増大しないで乗り続ける人も見受ける反面、10万kmに達しないで急にオイル消費が増えてきて買い換える人も稀に見受ける。弊社オイルを途中から使い始めてた軽四輪で、30万km走行達成の人も、オイルは消費するので半年に一度位の頻度で1リットル補充用オイルを買いに来店する。
 弊社オイルは他社と比較して高価格であり、且つロングライフである。だから人情的には少しでも長く使用したいと思う気持ちは多くの人に共通している。世の中には色々な人が居るのでビックリする話も飛び込んでくる。「古いジャガーで、あまり乗らないので6年間交換していないが交換したほうがいいのだろうか?」「エッ!6年間ですか?」「調子良くて、まったくオイルのタレは感じないよ」「でも、6年経ったのですから交換したほうが安心です(リスクが減少する)」また、会社の工場に来店した方が「オイルが減ったので補充して欲しい」そこで「解りました」と言って、車に行き、当社の「油脂類の無断交換禁止」シールを確認してビックリしたこともある。前回交換距離数が記載してあったので、計器盤の現在の走行距離を見て計算してみると「エッ、24000km過ぎている!お客様、補充ではなく交換したほうが良いのですが」と提案して交換することになった。この辺の事情は金銭が絡むので大変悩む所となるが最終的には「項目12:ピストンリングの固着」など、目に見えないリスクが早まるかもしれない。一度でも大幅に使用を続けることにより即座には表れることはなくても、見えない燃焼室やピストンリングのカーボン蓄積など、どこかに性能低下の要因を作ってしまう恐れもあるので、少し費用はかかるが少し余裕を見た定期的オイル交換を実施することが、結果的に愛車が好調子を長期間保ってくれる。それが結果的に安く付くかは、最後になってみなければ解らないことだが愛車を少しでも長く使用したいと考えているなら重要なことである。他にも製造時の出来不出来や、各種条件で変化してゆくので本当の所は解らないまま終わってしまうことが多い。(費用を掛けてまでOHして原因を特定することは通常はやらない)しかし、一度でも長期間に渡ってオイル交換を怠ることは、できるだけ避けたほうが賢明であろう。人間も無理をして病気になって始めて後悔するが、時には取り返しの付かない時もあるのだから。機械だって、まったく同じことが言える。
 ここまではオイル上がりについて解説してきた。日本車の多くはオイル上がりが原因でオイル消費が増大する。車種によっては、バルブオイルシールが弱かった車(オイル下がり)もあるようだが、確率的には、オイル上がりを疑って間違いないだろう。
B:オイル下がりの要因
1:バルブガイドの磨耗損傷によるガタ(中古車)
 日本車では、めったにバルブガイドにガタが出ることはない。私の知っている限りでは約20万km走行のミニカ(軽四輪)のガイドにガタが出て交換したそうだ。昔のオースチン・ミニのバルブガイドの材質は悪くて、レースで少し走っただけなのに楕円形に磨耗したのを見たことがある。日本車では、めったに経験したことがないほど寿命は長い部品ですが先程のミニカのように20万kmを越えれば磨耗する場合も出てくる。VWのビートルのエンジンをOHした時には排気バルブのバルブオイルシールは装着されていなかった。排気の圧力で押されるので排気バルブガイドの隙間からはオイルは排気管内に出ていかないので吸気側だけに付いていた。このことから解るように吸気側は負圧となるので不具合があればオイルが吸気菅内に吸い出され燃焼室で燃焼することになるからである。
2:バルブオイルシール損傷(中古車)
 上記の項目と密接に関連する。バルブガイドに大きなガタが出来れば、当然ながらバルブは大きく首を振ることになり、バルブステムも首を振るので結果的にオイルシールを傷つけてしまう。高度なテクニックを要するがバルブオイルシールの交換だけなら、エンジンを降ろさないで何とか交換できるエンジンも多い。
C:その他の要因
1:オイルにじみ及びオイル漏れ
 中古車だけに起きるとは限らないが確率的には古い走行距離の多い車ほどオイル漏れは発生するだろう。このオイル漏れも設計、製造、固体差が大きく、走行距離が10万kmを越えても、ほとんどオイル漏れしない車もあれば2万km走行でもエンジン、ミッション、デフなどからオイル漏れする車もある。車を同じ場所に一晩停めておいて下側にオイル溜りが出来るようなら修理を依頼することを勧める。少しくらいオイルがにじんでいる状態であれば観察を続けてみて変化がなければOKである。急にオイル消費が増大した場合は、一応、オイル漏れもチェックしたほうが良いだろう。

2:ターボチャージャーよりのオイルにじみ及び漏れ(排気管で燃えてしまう)
 ターボチャージャー・シャフトのべリング焼きつき防止をするためにエンジンオイルの油圧でシャフトを浮動させている。10万回転もするタービンシャフトはオイルの中で浮いて回転しているので焼きつかない。油圧が掛かっているシャフトのサイドシールはピストンリングを小さくしたような形状で古くなってくるとエンジン停止をした後で少しオイルが排気管内に漏れ出すことがある。翌朝、エンジンを始動した際に漏れたオイルが燃焼して白煙が出てビックリしたが少し経ったら何事も無く白煙は出なくなってしまう。このようなターボチャージャーは走行中でも極微量のオイルが燃えて燃焼していると考えられる。多量でなければドライバーはまったく気が付かない。特に10万km越えた車は、このターボチャジャーからのオイル消費と合わせて、A:オイル上がりする要因、項目12:ピストンリング固着 により、いつしか「急にオイル消費が多くなった」と感じる時期が到来する。ピストンリング固着と書いたが、短時間で急に発生するものではなく、長い年月(沢山の走行距離を経過して次第に蓄積固着されてゆく)を掛けて少しづつ進行し、リングの動きが阻害され始めると急速なオイル消費の原因となる。
G9FSのような完全燃焼を促進するようなアイテムを使用することにより、それまでピストン頭部などに堆積したスラッジが爆発の衝撃により次第に剥がれ落ち、排気管から放出されることもある。私の知人にG9FSを入れてみて評価を聞いてみたところ「エンジンの排気音がばらついていたのが息をつかなくなり排気音が一定になった」と報告してきた。古い仕事用のワンボックスだったので、単に燃焼効率が向上しただけでなく、排気管が綺麗になった車は、その源である燃焼室内も綺麗になっていると容易に予測できる。直った原因はプラグ電極部が綺麗になって、カブリが取れたか、固着度が低くかったために少量が剥がれ落ちて調子が戻ったと考えられる。最近はスラッジを除去する洗浄器具を設備導入して売り込んでいる店も多い。アイドリングのばらつく車やオイル消費の増大した車は、一度実施してみても損はないだろう。もし、少しでも改善されれば嬉しさが増す。

3:ブローバイガスによる噴出(サーキット走行等はオイルキャッチタンクにオイルが溜まる。
昔のエンジンはブローバイガスを、そのまま大気に放出していた。しかし、日本語で未燃焼ガスと書くように、ガソリンが気化した物や排気ガスの一部、オイルなど大気を汚染する物質が含まれているために、もう一度還元して再燃焼させる目的で、エアークリーナー内に戻される構造となった。このために高回転を酷使するような(サーキット走行または準じる走行)使用環境ではブローバイガスが増大しエアークリーナーをベトベトに濡らすことになる。レースなどの競技車輌では規則でオイルキャッチタンクの装着が義務付けられている。その目的はブローバイガスのホースから多量のオイルが噴出してコース路面に垂れるとスリップして大事故に繋がるので、噴いたオイルを受け止めるためのタンクである。ピストンクリアランスが大きかったり、シリンダーが傷んだりすればするほど、また高回転になればなるほど圧縮した混合気はピストンリングから漏れる量が増大してゆくために、オイルパン内の圧力は高まってゆく。この圧力向上により耐えきれなくなるとオイルレベルゲージが飛んでしまって多量のオイルを噴き出すトラブルに至る。
オイルパン内はクランクシャフトやピストンが高回転で回っているためにエンジンオイルを激しく攪拌しブローバイガスと混ざり合った状態となっている。そのためにブローバイガスと一緒にオイルキャッチタンクにオイルは噴出し多量に溜まってくる。大森ワークスに在籍した頃は、1000kmレースや12時間レースなどに参戦していたために、オイルキャッチタンクの底に溜まったオイルをオイルパン内に戻すホースを取り付けたりしていた。このようにレース車輌では顕著に現れるが、一般車輌に於いては「エアークリーナーのオイル汚れが多いな」という現象で、たいして気にも留めない。密閉度が高ければ高い程、ブローバイガスは減少し、圧縮圧力も高度に高めるために良好な燃焼が可能となってくる。弊社添加剤の添加や弊社オイルを使用したレース競技車輌に於いて「オイルキャッチタンクにオイルが溜らなくなったと」発売当初より多数の人から報告を受けてきた。中には、どうしてオイルの吹き出しが停まるのか不思議になり問い合わせてくる人もいた。メタルリペアー作用によりシリンダーとピストンリングの密着性が高まりブローバイガスが低減している何よりの証拠と、私は説明している。
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13−4:オイル消費についての総括

 ここまで説明してきたように燃費と同じで複雑な内部的要因、外部的使用条件、経年による汚れやヘタリなどが相互に関連してオイル消費が決まってくることが理解出来ただろうか?オイル消費が激しくなると、真っ先に故障を疑う気持ちはよく解るが、確率としては限りなく少なく、起こるべくして起こった経年変化と割り切ることである。減る車を購入してしまったら面倒でもオイル消費率に見合った一定期間でオイルレベルを確認し、減ったオイルを補充するよう心掛けなければならない。オイルレベルを確認するためにエンジンカバーを開ける事によって、エンジンルーム内の掃除や点検が出来るので早めの異常発見に繋がることにもなり、無関心でいるよりは良いメンテナンスのきっかけを作ることだろう。それまで無関心でいたのでオイル補充の際にバッテリーを見たら端子から錆びが出ていたとか、冷却系からLLCが漏れた跡を発見したりすることだろう。オイル劣化具合はオイル銘柄や使用条件により大幅に差が出てくる。また、愛車を何年間使用したいかで、オイル交換時期は大きく左右されてくる。
イタリア人の気質のようにシビアに受け止めないで「減ったら足せばいい」気楽に行こう。
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